【漫画】もしも“感情が湧き上がる”シロップがあったら? 人間の繊細な感情を描く『ココロシロップシンパシー』
繊細な感情と他者とのつながりを描いて
ーー2025年8月時点で、『ココロシロップシンパシー』はXで3万いいねと大きな反響を呼んでいますが、率直な感想はどうでしょうか?
のぴやか梢:投稿直後はあまり実感がなかったです。実は、それまで「もう終わりだ……」と感じていたところもあったので、今回反響をいただけてよかったです(笑)。
ーー今回は感情を湧き上がらせる「心シロップ」が存在する世界での物語ですが、設定はどのように思いついたのでしょうか?
のぴやか梢:普段私がしている、気持ちの整理の仕方をヒントにしました。私は現実と向き合いたくないなというときに、SNSを見るのが好きなんです。SNSには怒ってる人や、悲しんでいる人、面白がっている人などいろんな気持ちの人がいて、“他人の気持ち”に共感しているうちに、いい意味で自分の気持ちがおざなりにできるんです。
ーー一種の現実逃避のような感じですね。
のぴやか梢:一旦自分の気持ちを置いていけるというか。それがよくないときもあるんですけど……。でも、そのおかげで毎日なんとかやっていけるみたいなところもあって。その感覚が組み合わさって、この作品が生まれたのかなと思っています。
ーー「心シロップ」という架空の物体は、どのようにして思いついたのでしょうか?
のぴやか梢:たとえば、必死に頑張っているときって、何かを少しずつ取りこぼしているような感覚ってありませんか? 体の一部じゃないですけど、少しずつすり減っていってポロポロ出ていくみたいな。自分とは別のものになってしまうような、そのイメージがだんだん「心シロップ」になっていきました。
ーー本作に登場する2人、丸山エミと望月遥は対照的な性格に見えますね。
のぴやか梢:そうですね……。エミは最初、「自分の感情は動かない」という固定概念があったんだと思います。でも、遥と出会って気持ちが動き出す感覚を体験して。一方遥はエミとは違って、明るくて強い人だと思います。自立心があって、職場の外でも人間関係を構築できる。だから、仕事で泣くだけ泣いて、最後は結婚をしたんだと思います。
ーーそんな2人が出会って、どのような化学反応が起きたのでしょうか。
のぴやか梢:人の弱い部分を見ちゃうと、その人のことをわかったような気持ちになることってあると思うんですけど、エミもその状態だったんじゃないかと。遥が泣いているのを見てわかっている気になっていたけど、でも最後の展開で、やっぱり完全に人をわかることはできないということを理解したんだと思います。
ーー結婚する遥を見送るシーンですよね。
のぴやか梢:そうですね。自分の気持ちを感じるというのは、他人の気持ちに相乗りになることじゃなくて、自他は別々の感情を持っていることを理解することなんじゃないかなと思うので。近いと思っていた存在が実は遠くにあったという悲しさ、でも笑って見送らなければいけない。という複雑な感情であの表情になったのかなと。
ーー本作を通して、技術的な部分でこだわったところはありますか?
のぴやか梢:個人的に、“逆光”の表現が好きなんです。なので印象的なカットは逆光にしています。明暗のバランスが難しかったですね。
ーー最後に、読者の方にメッセージをお願いします。
のぴやか梢:制作頻度もそうなのですが、私自身、人生がかなりマイペースなんです。ゆっくりゆっくり歩んでいるんですけど、またどこかで読者の方と巡り逢えたら嬉しいなと思います。
■『ココロシロップシンパシー』は「ゼノン編集部」で公開中:https://comic-zenon.com/episode/316190246914017005