『鬼滅の刃』無限城編で冨岡義勇の株が爆上がり? 「柱」No.2争いの議論も白熱
※本稿は『鬼滅の刃』の一部ネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。
アニメ『鬼滅の刃』が再び日本の映画史に新たな記録を打ち立てた。7月18日に公開された劇場版『鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』は、公開4日間で観客動員数516万4348人、興行収入73億1584万6800円を突破。これは2020年公開の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(国内最終興収404.3億円)をも凌ぐ勢いであり、20日には単日で20億3782万200円という日本映画史上歴代1位の記録を達成した。さらに、オープニング成績・初日成績・単日成績という3部門すべてで歴代最高記録を更新する快挙を成し遂げ(興行通信社調べ)、再び社会現象化の兆しを見せている。
そのなかで、猗窩座に並び大きな話題となっているのが、水柱・冨岡義勇の圧倒的な存在感。本作では原作以上にその戦闘力や精神性が克明に描写され、映画のレビュー欄には「柱No.2」論争が過熱しているのだ。
これまで、原作読者の間で語られてきた「柱最強ランキング」。岩柱・悲鳴嶼行冥が最強であることは原作でも明言されており、議論の余地はない。しかし、問題はその下の序列である。
作中では明確には示されていないものの、読者の間では風柱・不死川実弥が2位、3~5位を蛇柱・伊黒小芭内、霞柱・時透無一郎、水柱・冨岡が争っているというのが通説となっている。根拠となっているのは、戦闘において発現する3大要素、すなわち「痣」「透き通る世界」「赫刀」の有無。そこに実戦での戦果、生命力、精神力、技量などの総合的なパフォーマンスが加味されての序列となっている。
原作未読の方には一部ネタバレとなってしまうが、パワー型の不死川は痣、赫刀はともに発現。透き通る世界は見えていなかったが、鬼を酩酊させる稀血の持ち主であり、重症でも復帰できる驚異的なタフさはそれを補って余りある。鬼となった母を自ら殺した過去を持ち、鬼への憎悪は柱随一であることも加点項目。上弦の壱・黒死牟から「柱上位の実力者」と認められたことも「No.2」と評価されているゆえんだ。
一方、伊黒と時透はこの3大要素すべてを発現させている。伊黒はラスボスの鬼舞辻無惨戦では致命傷を負いながらも戦線に留まり続け、時透は2カ月で柱になった天才で、技術面は最高レベルだ。
翻って、義勇は猗窩座(あかざ)との戦いで痣を発現し、無惨戦では赫刀の発現に成功したが、透き通る世界だけは最後まで到達できなかった。この一点が、義勇を3位以下と見なす評価の拠り所となっている。
しかし、本作ではアニメという映像表現を通じて、義勇の戦闘描写が原作以上に強調され、水の呼吸による繊細かつ的確な剣技が、作画と演出によって極限まで可視化されていた。
もともと義勇の戦い方は派手な力技ではなく、冷静で論理的な間合いと動作の積み重ねによって相手を制圧するスタイル。アニメでは光のエフェクトや劇伴のアレンジにより、その静ひつな強さが大きな魅力として表現されていた。猗窩座の猛攻を寸分違わず受け流し、炭次郎をかばいながらも的確に反撃を加える一連の動作は、まさに技巧派の剣士でなければ実現できない芸当である。そうした戦い方は他の柱たちにはない特異性である。
実際、長い歴史がある水の呼吸で、義勇は新たに「拾壱の型・凪」を編み出している。凪は上弦の上位でようやく破れる可能性があるかどうかという凄すぎる技だ。義勇本人はどんなに強くても“最終選別をクリアしていないのに今の地位に就いている”との認識を持つが、あまりにも自己肯定感が低すぎるだろう。
ネット上では「義勇がヤバすぎた」「もうこれ柱No.2だろ」といった声が多く見られ、義勇再評価の流れを後押ししている。
もちろん、第二章、第三章では不死川、伊黒、時透についても原作では描き切れなかった演出が期待されるところ。「柱No.2は誰か」という問いに対する最終的な結論は、今後の描写とファンの議論にゆだねるとしても、今回の無限城編で冨岡義勇という剣士の株が爆上がりしたことは間違いない。