【トップ対談連載】LINEマンガ・髙橋将峰×セルシス・成島啓 制作アプリ「CLIP STUDIO PAINT」が生み出すwebtoon躍進への期待

■webtoonの成功が、マンガのグローバル化を後押しする

対談取材はセルシスのオフィス内にて行った

――確かに、アニメ化され、今年2月には映画化もされて人気を博した『先輩はおとこのこ』や、累計閲覧数が1億8000万ビュー(※3)を超えた『神血の救世主~0.00000001%を引き当て最強へ~』など、国産webtoonの大ヒット作は出はじめていますね。

髙橋:ただ国産webtoonの可能性はまだまだ、もっと大きなものだと確信しています。イラストやマンガを描けるクリエイター予備軍がこれほど多く、実際にマンガ作品を描いている人の裾野がこれほど多い国は他にないですから。その実力をもったクリエイターの方々が、マンガほどの高いリテラシーを必要とせず、グローバルで市場が急成長しているwebtoonに参戦したら、絶大に支持されるのは目に見えています。しかも、マンガをアニメ化する力も、日本が圧倒的に高いですからね。大人気webtoonがグローバルで評価を受けて、そのままアニメがグローバルでヒットするところまで見えてきます。

――なのであれば、なぜ日本のクリエイターの方々が、まだ本気でwebtoon作品に乗り出していない現況があるのでしょうか?

髙橋:「ひとりで紙とペンがあれば描けるものではなかった」からです。

成島:そうですね。マンガの強さは、学校でノートの端に、落書きして描ける手軽さもある。しかし、縦スクロールでフルカラーがベースとなるwebtoonはそれができませんでしたからね。

髙橋:しかし、『CLIP STUDIO PAINT』でこのハードルがうんと下がりました。紙とペンで落書きからはじめるように、誰しも気軽にwebtoonに挑戦できるようになった。タブレットやスマートフォンのアプリでなら、たったひとりで描けますからね。

――「縦スクロール」や「スマホで閲覧される」ことなどから、クリエイティブや世界観の表現に難しさなどはないのでしょうか?

髙橋:たまにwebtoonを指して「転生モノや学園モノばかりで世界観が限られるのではないか」とか「宇宙を舞台にした広大なストーリーなどは表現できない」などと言われますが、そんなことはありません。現にNetflixで配信されてグローバルで人気となった『トラウマコード』(※2)という医療系ドラマがありますが、あれも同じ小説原作のwebtoon版がすでにありますからね(webtoon版タイトルは『重症外傷センター:ゴールデンアワー』)。世界観が縛られることもありません。

 もとより、日本のクリエイターは本当に多彩で優秀なので、ビジネスチャンスとソリューションさえあれば、才能をあますところなく発揮してくれる。自ずとマーケットは開いていくと思います。

――その意味ではソリューションは『CLIP STUDIO PAINT』のwebtoon対応で用意されました。ビジネスチャンスのほうはどうでしょうか?

髙橋:webtoonはグローバルで読まれることで、少し規模が違いますよね。たとえば『WEBTOON CANVAS』で実施されている「Webcomic Legends」という新人発掘コンテストがありますが、グランプリの賞金は15万ドル。日本円で今ならば2000万円を軽く超えます。また海外の例ですが、連載が決まれば、グローバルマーケットで読まれるので、数千万円から1億円プレイヤーの作家となった方々も多くいます。

成島:いまwebtoonからのアニメ化も、ものすごく増えてますよね。

髙橋:やはりwebtoonはグローバル市場に出るのが早いので、アニメ化したときもグローバルで売れる可能性が高い。そのため、連載がはじまって初速が良いと、すぐにアニメ化のオファーも入ります。チャンスは本当に目の前にあります。

――グローバルでマンガもアニメも読みつがれる日本の名作がこれから生まれるかもしれない。webtoonにおける鳥山明先生のようなレジェンド的存在がひとり生まれたら、一気に潮目が変わるのかもしれませんね。

髙橋:おっしゃるとおりですね。手塚治虫先生からはじまって、鳥山明先生をジャンプで知って、「ああ、なりたい!」と夢見た尾田栄一郎先生が出てくるように歴史が刻まれていくと思います。また、国産webtoonの名作がどんどん出てくるようになると、既存の横読みマンガも、グローバルに出ていくチャンスにつながると考えているのです。

――どういうことでしょう?

髙橋:その読みやすさからくるグローバルでの広がりを考えると、今後はマンガよりもwebtoonが読まれる機会が増えていく。そこで国産webtoonにふれるグローバルな読者が増えていけば、「日本のwebtoonはすごい」という興奮を入口にして「それ以前からあるマンガはどうなんだろう?」と手にとる方が必ず増えると思うのです。

 日本のマンガには膨大な名作のアーカイブがありますが、それをグローバルに開く可能性が、webtoonにはあると思います。僕たちは「マンガの未来を創る」をビジョンとしている。グローバルでもマンガやwebtoonを、音楽や映画のような当たり前のエンターテインメントにしていくことを続けていきたいですね。

(※1)「WEBTOON CANVAS」では賞金総額100万ドルの「Webcomic Legends」という大規模な賞金のコンテストが行われている。
https://about.webtoon.com/press-release/166

(※2)Netflixシリーズ「トラウマコード」(webtoon版タイトルは『重症外傷センター:ゴールデンアワー』)はNetflixの週間グローバルTOP10(非英語シリーズ)で1位を獲得するほか、日本国内の週間TOP10(シリーズ)で5位を獲得するなど高い人気となっている。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000372.000063705.html

(※3)「LINEマンガ」にて2025年4月時点

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