『ダイヤモンドの功罪』地獄のやりとりに読者は阿鼻叫喚……最新話で描いた深すぎる「罪」

 本作が我々のよく知るスポーツ漫画と大きく異なる点。それは勝利への渇望も、努力することの美しさも、チームメイトとの友情も、そのどれもが主軸にはないことだろう。

 読者に刺さるのは高みに行き過ぎた人間の孤独と、自分になら何を言っても構わないのだという弱者の驕りに対してのやり場のない怒りだ。試合に勝って楽しいとか、昨日まで出来なかったことが練習の末できるようになった、といったスポーツ漫画でよく見られる感動や喜びを本作に期待することはあまりオススメしない。

 実際問題、次郎自身は何も間違ったことをしている訳ではない。しかし孤独な怪物がわかり合おうと歩みよったところで、人間側は一向に近寄ってこようとしない。その存在を怖がって遠ざけるか、自分達の弱さを盾にして怪物を追い込むことしか出来ないのだ。

 そんな地獄のような展開が待ち受けていることがこれからも続きそうな状況ではあるが、読者の大多数が一般人であることからして、俯瞰で天才側が受け止め続ける苦しみの深さから学べる部分は大きい。マジョリティーとは時に理不尽で傲慢なのだから。

 コミックス巻末に添えられるおまけ漫画の登場人物達のゆるくほっこりするエピソードがせめてもの救いだ。読者の感情の振れ幅お化けフォーク級の本作を是非とも手にとって、地獄の扉を開いていただきたい。

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