『ぼざろ』『ガルクラ』ロック漫画がヒットの本命? 最注目『ロックは淑女の嗜みでして』が熱すぎる理由

本格的なバンド描写で世界に羽ばたく?

 『ロックは淑女の嗜みでして』の肝とも言える演奏シーンだが、アニメ版ではその熱量の高さが見事に再現されていた。CGを活用しつつ、キャラクターのダイナミックな動きを描いているのが特徴的で、声優陣の演技もそこに独特の勢いを加えている。とくに第1話の時点では、『はねバド!』の荒垣なぎさ役などで知られる島袋美由利が音羽の“豹変”を絶大なインパクトと共に演じていた。

 しかも演奏シーンではモーションキャプチャーが導入されており、オープニング主題歌も担当するBAND-MAIDのメンバーたちがそれぞれのキャラクターのアクターを担当。その結果、身体の動きや腕の使い方などに至るまで、かぎりなくリアリティの高い演奏描写が実現されている。

 なお『ぼっち・ざ・ろっく!』や『ガールズバンドクライ』、『BanG Dream!』シリーズなど、近年のバンドアニメは当然のようにモーションキャプチャーを取り入れ、洗練された演奏シーンを実現している。そのなかで同作が特徴的なのは、さわやかさではなく激しさに振り切ったハードロック路線であることだろう。

 というのもBAND-MAIDといえば、メイド服姿でありながら聞く者を圧倒するようなハードロックを奏でる女性5人組バンド。そのコンセプトによって海外でも人気を博し、ワールドツアーも成功させているほか、YouTubeに投稿されている『Thrill』のMVは2,200万回近く再生されている。

 優雅な見た目とのギャップも、ゴリゴリのロックサウンドという音楽性も、『ロックは淑女の嗜みでして』のキャラクターたちと共通する点だ。そうした背景があってこそ、モーションキャプチャーによる高度なシンクロが実現しているのではないだろうか。

 近年ではBAND-MAIDだけでなく、BABYMETALやLOVEBITESといったハードロックあるいはメタル系のガールズバンドが海外進出し、人気を博している。そうした文脈の真っ只中で生まれた同作は、海外で大きな注目を集めることになるかもしれない。

 また映像表現としては、さながらデイミアン・チャゼル監督の映画『セッション』のような“スポ根”の演奏描写となっていることも同作の面白いポイント。オリジナリティあふれる青春バンドものの秘密兵器として、アニメシーンに新しい風を吹かせてくれることに期待するばかりだ。

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