大学サークル出身芸人、お笑い界を席巻中? 識者に聞く、レベル向上の理由と今後の注目株

大学お笑いのレベルが上がった理由③ 事務所主催の大会

  今やプロのお笑い事務所も、大学お笑いの世界に注目し始めている。吉本興業やワタナベエンターテインメントといった大手事務所が、学生向けの大会を主催することについて、鈴木氏は以下のように分析する。

 「吉本が2015年に始めた『NOROSHI』という大会は、学生芸人にとっても大きな転換点になりました。優勝したサークルには賞金が出るほか、NSCの入学金が免除されるという特典があります。事務所からしても、大会がオーディションのような役割を果たしているわけです」

  事務所に所属しやすくなったことで、プロ入りのモチベーションが上がった学生も少なくないという。

 「『NOROSHI』が立ち上がった時期と前後して、お笑い制作会社のSLUSH-PILEやK-PROが、大学生を中心としたライブイベントを組み始めました。ライブではプロの芸人と一緒に舞台に立つこともありますから、大学お笑いのレベルが一気に底上げされたように思います」

思わぬブレイクの形も

  とはいえ、サークルに所属しているのは、まだ10代や20代の学生たち。誰もがプロになった後を思い描いて活動しているわけではない。

 「令和ロマンのように、学生時代から着実にネタを突き詰めていた芸人もいますが、彼らは一つの例に過ぎません。ひょっこりはんさんのように、サークル時代にさまざまな芸を試した結果、独自のキャラクターで売れた人もいます。真空ジェシカも実力こそあれど、大学時代には『あの芸風では万人受けしないだろう』と思われていたと聞きますし、思わぬ形でブレイクするケースも多いようです」

今後の活躍に注目したい“大学お笑い”出身芸人

  鈴木氏は、今後の活躍に期待できる大学お笑い出身者として、ママタルトとナイチンゲールダンスの名前を挙げた。

 「ママタルトの檜原さんは、旧コンビ(サンストレンジ)時代に前述の番組『学生HEROES!』が開催する大会で優勝したこともある実力者。相方の大鶴肥満さんも、明治大学のお笑いサークル出身です。昨年の『M-1グランプリ』でも決勝に進出していますし、今後さらに活躍の場を広げることでしょう。ナイチンゲールダンスも一橋大学と日本大学出身という高学歴コンビで、『M-1』に2年連続で準決勝進出しています。幅広い層にウケる漫才をするので、ブレイクするのも時間の問題ではないでしょうか」

  令和ロマンや真空ジェシカといったスターが誕生したことで、現役世代の大学お笑いもさらなる盛り上がりを見せていくことだろう。新たな実力者がどこから生まれるのか、目が離せない。

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