『カグラバチ』トレンド入りした最新話のキモは食事シーンにあり? 殺伐とした世界観の中で「食べる」ことの意味

『カグラバチ』の食事シーンが持つ意味とは

 71話でもそうだが、『カグラバチ』回想や重要な対話のシーンなどに「食事」を絡めてくることが多い。チヒロが救った特異体質をもつ少女のシャルは、母と二人で幸せに暮らしていたところを誘拐された。この時に倒れたコップとバラけたサンドイッチは、積み重ねた平穏が一瞬で崩れた様を表しているようだ。

 また、楽座市という闇オークションを代々取り仕切ってきた、漣家の当主・漣京羅(さざなみきょうら)という強大な敵までもが、死の間際に「楽座市がなければ」と家族団欒の食卓を夢に見ていた。

 読み手によって違いはあるものの、ストーリーの佳境で差し込まれる食事シーンは「他者の意見を飲み込む」「一度壊れた日常への回帰」といった暗喩を孕んでおり、多くの読者がそのメッセージ性を考察している。

 食事シーンについて作者・外薗健が明言したものは無いが、チヒロが一人で何かを食べるシーンが未だ描かれていないことや、行動をともにしている六平の旧友・柴からの食事を断り続けていることなど、今後も食事シーンに重要な意味が込められそうな予感。

 作中で食事シーンは、戦闘直前もしくは戦闘中に描かれていることがほとんどだ。復讐のために身も心も削る心優しきチヒロが、戦いを気にせず温かな食卓を囲むことを祈りながら、今後も本作を読み進めていきたい。

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