『DEATH NOTE』小畑健の作画のこだわりは? 人間と非人間キャラの対比から生まれる美しさ

 手塚賞の準入選受賞から今年で40周年を迎える漫画家・小畑健。アニバーサリーイヤーに合わせて開設された公式Xアカウントに、『DEATH NOTE』のヒロイン・弥海砂の書き下ろしイラストが投稿され話題となったのも記憶に新しい。


 小畑健といえば、細く美しい線による描き込みと、ファンタジックな設定にもリアリティを持たせる、登場人物たちの筋肉や表情描写にも定評のある漫画家だ。本稿では、その魅力と、作画のこだわりなどを考察したい。

美しい無表情こそ小畑節 人間+非人間コンビのコントラスト

 『DEATH NOTE』の夜神月とリューク、『ヒカルの碁』のヒカルと藤原佐為をはじめ、小畑作品には、主人公と霊や神といった非人間キャラクターがコンビで描かれることが多い。

 小畑作品の作画の凄さや魅力は、非人間キャラクターたちと人間との表情の違いにある。例えば『DEATH NOTE』に登場する死神のリュークだ。作品を通して夜神月と会話する時のリュークは、常に目と口を大きく開き口角を上げて笑っているかのような表情で描かれている。一見フレンドリーに見えるが、デスノートの使用ルールの一部を伏せる、月が「新世界の神となる」と言い放った際に「人間って面白!!」と心の声で面白がるなど、常に人間の反応を観察し利用しようとする。作品終盤になっても、月と友達になったり、本音を話したりすることはない。Lとの攻防の中で、怒りや焦り、時に笑顔など様々な感情の起伏を露わにする月とは対照的だ。

 小畑自身、過去インタビューで、「感情がない顔、無表情を描くのが好き」と回答。リュークなど死神たちの表情を、いかにカッコよく美しい造形で描くかにこだわっていたという趣旨の発言をしている。表情豊かな人間と、造形の良さを極めた非人間キャラとの対比、これこそ小畑健作品の真骨頂と言えるのではないだろうか?

完全分業制が名デザイン誕生の鍵?

 大場つぐみ原作の『DEATH NOTE』『バクマン。』、ほったゆみとタッグを組んだ『ヒカルの碁』など、小畑健は作品ごとに漫画原作者と組み、作画に徹することで数々の名作を世に送り出してきた。

 この分業スタイルは徹底されており、様々なメディアミックスが行われた『DEATH NOTE』の連載時ですら、小畑は大場と3、4回ほどしか会わなかった上、ストーリー展開などについても、特に意見を交わすこともなかったという。

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