10万部突破の韓国ホラー小説『カクテル、ラブ、ゾンビ』チョ・イェウンに聞く社会問題をホラーで描く理由
■日本の作家から大きな影響を受けている
ーー日本の小説も読んでいるそうですね。好きな日本の作家はいますか。
私が中学生のころ、韓国で海外のエンタメ小説がとても流行しました。『ダ・ヴィンチ・コード』などのスペクタクルな作品が流行っていて、東野圭吾さん、石田衣良さん、宮部みゆきさんがとても人気がありました。私は宮部みゆきさんと恩田陸さんがとても好きでした。宮部みゆきさんの作品は社会に対するメッセージが込められた社会派ミステリーで、とても好きな作風だったので没入しながら読んでいました。恩田陸さんの作品は、幻想的で夢の中にいるような雰囲気に魅了されました。お二人の作品を読みながら成長し大人になったという感じです。最近は読む本の世界が少し広がって、大江健三郎さん、三島由紀夫さんなどの純文学も読みはじめました。
ーー好きな韓国の作家についても教えてください。
韓国の作家で好きなのは、60代の女性の殺し屋を描いた『破果』のク・ビョンモさん、『7年の夜』のチョン・ユジョンさんです。主人公が殺し屋の場合、多くの作品は中年の男性が主人公であることが多いですが、60代の女性を主人公にしている点が面白いです。
ーー日本と韓国の文化の違いについて、感じていることがあれば教えてください。
日本には旅行でしか訪れたことがないので、そこまで違いを感じたことはありません。ただ、日本のことを紹介するコンテンツに触れてうらやましいと思っていたのは、中学・高校時代に部活に夢中になれることです。韓国では中学・高校は勉強ばかりなので、日本の中高生が部活に打ち込む姿を、幻想のような感じだと思っていました。
ーーご著書が翻訳されることについてどう感じていますか?
本当にうれしく思っています。私の本が海外で出版されたのは中国に続いて、日本が2カ国目です。自分の作品がまったく違う言語で表現されていることに言い表せない感動を覚えます。翻訳書が出版されたことで、翻訳がどれだけ美しいものなのかを改めて考えるきっかけになりました。もともとは私の中だけに存在していた想いが、翻訳によって細い橋がかかり、世界に住むたくさんの方々のところに届いていると感じています。
■著者プロフィール
作家。2016年に短篇「オーバーラップナイフ、ナイフ」で第2回黄金の枝タイムリープ公募展で優秀賞を受賞し、作家デビュー。KBSでスペシャルドラマ化された。また、本作が収録された『カクテル、ラブ、ゾンビ』は10万部突破のベストセラーとなる。著書に『ニューソウルパーク ゼリー売りの大虐殺』『テディベアは死なない』『トロピカル・ナイト』(いずれも未邦訳)などがある。良い話とはなにかについて悩みながら作品活動を続けている。