『女の園の星』『ふつうの軽音部』『路傍のフジイ』……栄冠はどの作品に? マンガ大賞2025ノミネート10作品を全解説

『女の園の星』『ふつうの軽音部』『路傍のフジイ』……栄冠はどの作品に? マンガ大賞2025ノミネート10作品を全解説『女の園の星』『ふつうの軽音部』『路傍のフジイ』……栄冠はどの作品に? マンガ大賞2025ノミネート10作品を全解説『女の園の星』『ふつうの軽音部』『路傍のフジイ』……栄冠はどの作品に? マンガ大賞2025ノミネート10作品を全解説【マンガ大賞2025二次選考ノミネート作】

『ありす、宇宙までも』売野機子、小学館
『女の園の星』和山やま、祥伝社
『COSMOS』田村隆平、小学館
『この世は戦う価値がある』こだまはつみ、小学館
『死に戻りの魔法学校生活を、元恋人とプロローグから(※ただし好感度はゼロ)』白川 蟻ん 、六つ花 えいこ、秋鹿 ユギリ、KADOKAWA
『図書館の大魔術師』泉光、講談社
『ドカ食いダイスキ!もちづきさん』まるよのかもめ、白泉社
『どくだみの花咲くころ』城戸志保、講談社
『ふつうの軽音部』出内テツオ、クワハリ、集英社
『路傍のフジイ』鍋倉夫、小学館
(五十音順)

 誰かに勧めたい漫画を、書店員や漫画好きが選ぶ「マンガ大賞2025」の二次選考ノミネート作が決定した。宇宙飛行士の船長を目指す少女の話や、仕事なり食といったものの限界に挑むOLの話、高校の軽音部で頑張る女子高生の話と、女性の頑張りを描く作品が並び、ファンタジーにSFといったジャンルの作品もあってと、今回も多彩な作品が出そろった。これらの候補作から「マンガ大賞2025」に輝く作品が決まる。

 1月21日に公表された二次選考ノミネート作の10冊は、これまでの「マンガ大賞」にノミネートされていなかった新顔が多かった。過去にノミネート歴を持つ作品は、和山やま『女の園の星』(祥伝社)くらい。女子高を舞台に国語教師の星先生と生徒たちとの交流を描き、女子高における女子の生態を強く感じさせる内容で話題となって、「マンガ大賞2021」から3年連続でノミネートされた。2024年10月に単行本の4巻が出たこで1年おいてのノミネート。和山自身も7度目のノミネートとなるだけに、今回こそ受賞となるか?


 女性が”主役”という意味では、売野幾子『ありす、宇宙までも』(小学館)も宇宙飛行士の船長を目指す女子の物語だ。中年男性が宇宙飛行士を目指す小山宙哉『宇宙兄弟』(講談社)も人気だったが、女性の宇宙飛行士が実際に飛ぶようになる中で、コマンダーという責任重大な役割を目指す設定は新鮮。生きづらさを抱えている若い人に、希望と気力をもたらす作品として人気急上昇中だ。

 すでに世に出て働いている人には、こだまはつみ『この世は戦う価値がある』(小学館)が気持ちに響く作品として支持されている。パワハラやセクハラにまみれ、残業も厳しい会社で限界まで追い詰められていたOLが、開き直るようにして自分の生き方を始める痛快な展開が、女性に限らず社会で汲々として生きている人に夢を与えている。

 まるよのかもめ『ドカ食い大好き! もちづきさん』(白泉社)は、違う意味で限界に挑む物語。空腹を紛らわそうとドカ食いを続ける女性の豪快な食べっぷりは、羨ましくもあるが同時に心配も募る。見ていて楽しいが自分でやってみるには恐ろしい。そんな望月さんの生き様を見守る楽しさを持った作品だ。

 出内テツオ原作、クワハリ作画の『ふつうの軽音部』(集英社)は2024年でもっとも話題になった漫画の1冊。高校に進学してエレキギターを買い、軽音部に入った鳩野ちひろが、その印象的な歌声で次第に存在感を高めていくストーリーが心を揺さぶる。andymori、や銀杏BOYZ、ナンバーガールといった渋めの邦ロックが登場して、そうしたジャンルのファンも引きつける。

「マンガ大賞2024」で大賞となった泥ノ田犬彦『君と宇宙を歩くために』(講談社)とも重なる少年たちの友情物語が、城戸志保『どくだみの花咲くころ』(講談社)。予測不能な行動をとってクラスでも浮いていた信楽に興味を持った優等生の清水が、信楽の作る粘土細工に心を奪われ、近づいていって親交を深めていく展開に、固定観念や偏見を超えて理解する大切さを教えられる。

 鍋倉夫『路傍のフジイ』(小学館)は、どこまでも普通に見える中年男の生き様が、承認欲求にまみれたこの世界にあってかえって心を捉えているよう。どうしてフジイのような人間ができたのか。同じような生き方をできるのか。限界突破の果てに爆発する『この世は戦う価値がある』と比べて読むことで、先の見えづらいこの時代を生きる指針を得られそうだ。

関連記事