『HUNTER×HUNTER』本物のヒソカはどこ? 読者を疑心暗鬼にさせる幻影旅団との“化かし合い”を振り返る
カキンマフィアの前に現れたヒソカは偽物?
だが、この「イルミ偽物説」を打ち消すように、9月4日に発売された第38巻ではヒソカが姿を現してしまった。流れとしては、「幻影旅団」の協力者となったカキンマフィアの捜索網に引っかかった形だ。発見された場所は第3層で、カキンマフィア同士の抗争が収まるまでのあいだ、第1層の娯楽エリアで遊んでいてほしいと頼まれていた。
こうなると構図はとてもシンプルで、最下層から徐々に上層へと移動している「幻影旅団」と、第1層で控えるヒソカという図式になったように見える。しかしこのヒソカに関しても、「別人ではないか」という疑いを差し挟むことは不可能ではない。
「幻影旅団」メンバーのボノレノフは、「戦闘演武曲」という念能力の使い手だが、その技には他人に“変身”できる「変容」(メタモルフォーゼン)というものがあるという。乗船直後にボノレノフはクロロにこの技の使い道を考えてほしいと頼み、協力関係を結んでいたため、何らかの作戦によってヒソカに成りすましている可能性はありえるかもしれない。そして第3層のヒソカが偽物だったとすれば、ヒソカが現在イルミに成りすましているという説との矛盾点もなくなる。
あるいは、逆にイルミは本物で、第3層のヒソカの方が偽物だったという考え方もできるだろう。つまり第3層のヒソカは、イルミが「針」の能力によって擬態した姿ではないかという仮説だ。
ちなみに36巻収録の第380話では、イルミがカルトと共に第3層にいるところが描かれていた。しかもそこでイルミは、「仕事」(ビジネス)のため第3層に残ることを強く主張している。その後、何らかの策があって“ヒソカのフリをする”という奇策に出た……と考えることもできなくはなさそうだ。
もっとありそうな線としては、単純にイルミとヒソカの敵対がフェイクで、本当はいまだに裏で手を組んでいるという可能性も捨てがたい。ヒソカの真の依頼には「ヒソカに化けて囮になる」という行為が含まれており、それこそがイルミのいう“ビジネス”だったのかもしれない。
変身能力をもつキャラクターが入り乱れているB・W号。互いに裏をかく探り合いは終わる気配がなく、考察しがいのある展開がまだまだ続きそうだ。ヒソカと「幻影旅団」のメンバーによる死闘はどこへ向かっていくのだろうか。