大谷翔平の活躍、漫画だったら「担当に突っ返される」レベル? 50-50達成で振り返る“漫画超え”の一戦

 大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手が現地時間9月19日、マーリンズ戦に出場し、史上初の「50本塁打・50盗塁」という快挙を達成した。それのみならず、この日は3本塁打を含む6打数6安打10打点2盗塁という目を疑うような結果を残し、即日「51-51」に記録を更新。Xでは「漫画の主人公」「漫画の世界」というの言葉がトレンドに入った。

 まさに漫画だ。『みどりのマキバオー』や『モンモンモン』などのヒット作で知られる漫画家のつの丸氏は、自身のXで「大谷翔平はもうバカが考えたマンガ。こんなネーム描いて出したら担当に突っ返されるって」とコメントしている。

 実際、野球をモチーフにした創作物において、大谷翔平以上の主人公を作り上げることができるのか……という疑問は方々で語られており、魔球をはじめとする異能の設定がない、リアル志向の作品には少なからず影響があるだろう。将棋界の藤井聡太、ボクシング界の井上尚弥もそうだが、彼らのような「非現実的なスーパースター」は各ジャンルを大きく盛り上げている一方で、作家泣かせと言えるかもしれない。

 大谷翔平のキャリアはどこを切り取っても、漫画のクライマックスになりそうなシーンばかりだ。日本球界を二刀流で席巻しただけでも漫画になるし、そのままメジャーに乗り込み、MVPを獲得したところで物語が終わっても違和感がないだろう。40-40をサヨナラ満塁ホームランで決めたシーンもインパクトは絶大だ。

 そのなかで強い印象を残しているエピソードといえば、2023年の第5回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)決勝、アメリカ戦だ。3対2と日本の1点リードで迎えた9回、痺れる場面でクローザーとして登板した大谷翔平。MLBを代表するスーパースターにしてチームメイトのマイク・トラウトを三振に切って取り、侍ジャパンを優勝に導いた。そしてこれは漫画好きにとって、「漫画のような展開」どころか「漫画を超えてしまった」一戦だった。

 というのも、人気野球漫画&アニメ『MAJOR』で極めて近い展開が描かれていたのだ。160kmのストレートを投げ込む剛腕の茂野吾郎は、「W杯」で日本代表のクローザーを務め、現実と同じように決勝のアメリカ戦に登板。相手はアメリカのスターで、お互いの父親の代から深い因縁のあるジョー·ギブソンJr.だった。違ったのは、大谷はトラウトから三振を奪って試合を決め、吾郎はギブソンJr.にサヨナラ満塁ホームランを浴びたこと。どちらもドラマティックな展開であり、当然、物語として見たときにどちらが優れているとはいえないが、「主人公の活躍」と見れば大谷に軍配が上がる。

 ただ、ほんの数年前であれば『MAJOR』の方がリアルで、吾郎が胴上げ投手になるのは、つの丸氏の言葉に準えるなら「担当に突っ返される」ような、できすぎたシナリオだったのかもしれない(もちろん、現実に主人公を超えるプレイヤーが出てきても『MAJOR』は面白い)。

 いずれにしても、大谷翔平の活躍によって「野球界で未達成の快挙」は加速度的に失われていく。「三冠王&最多勝」も、「MVP(打者)とサイ・ヤング賞(投手)のダブル受賞」も、「同一試合で完全試合&サイクルヒット」も、非現実的だが「大谷ならやりかねない」ものになってしまった。近年のトレンドと合わせて考えれば、「漫画の世界に転生」しても無双してしまいそうな選手だ。

 もし今後、主人公がメジャーリーグを目指す漫画が生まれるとしたら、大谷と比較されるだろうそのキャラクターは、どんな努力を重ね、どんな成績を残すのか。投げて、打って、走れる大谷との競合を避けるとしたら、現状「守備」という要素が重要になりそうだが、果たして。大谷と同じように、野球少年・野球少女に夢を与えてくれる作品が今後も生まれ続けることに期待したい。

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