コンビニ、本の配送縮小問題 地方と雑誌系出版社に大きな打撃に?「近い将来なくなるかも」

■トーハンの引継ぎはどうなる?

 出版取次大手のトーハンが、コンビニエンスストアに雑誌や書籍を配送する事業を、2025年3月に日本出版販売(日販)から引き継ぐことを予定している。一部メディアがトーハンが完全には引き継げないと報道したが、7月22日にトーハンが「事実と異なる点がある」とプレスリリースを出した。

  その文面によると、「あたかも弊社の一方的な判断で雑誌配送を打ち切るような記述も見られますが、そのような事実はありません」とのこと。また、日販が現在配送している、全国のファミリーマートとローソンの計約3万店を「すべて引き継ぐことで合意したという事実はありません」と述べている。

  プレスリリースによると、約3万店のうち、配送店舗数はファミリーマートとローソンの各社1万店で、合計約2万店程度になるようだ。その理由は物流センターのキャパシティーの問題であり、いわゆる2024年問題などとは無関係という。そして現在も、2025年3月以降の雑誌配送については、チェーン本部と加盟店の間で協議を重ねているそうだ。

■地方の文化に大きな打撃か

  日販のコンビニ配送の売上高は深刻な赤字となっており、10年前と比べ、約3分の1まで落ち込んでいた。特に主力だった雑誌の売上が落ち込んだことや、近年は新型コロナ騒動やロシアのウクライナ侵攻などに伴う燃料の高騰もダメージになっている。撤退を決めたのはそうした複合的な事情によるものと考えられる。

  筆者が取材した編集者は、「大手コンビニは雑誌の取り扱いを縮小していき、将来的にはなくしてしまうのではないか」と語っていた。というのも、コンビニのコンパクトなスペースの中で、雑誌や書籍は売り場面積を大幅に占有する一方、思ったほどの利益が出ないとされるためである。

  トーハンの今後の対応次第では、雑誌の大幅な部数減・売上減は避けられないという見方もある。特に、地方の読書家にとっては大きな打撃になる可能性が高い。地方では書店が相次いで閉店しており、事実上コンビニが書店のかわりになっている地域が少なくないためである。まさにコンビニは出版文化を支えるインフラとなっているのだ。

  筆者の知り合いで、フランチャイズのコンビニを経営する店主A氏は、「『ジャンプ』が数百万部出ていた時は発売日にはレジの横に山を築いて販売したほどだったけれど、今や漫画雑誌もほとんど売れなくなった」「『【推しの子】』みたいなメガヒットは出ているけれど、完全にネット書店と電子書籍に客が移っちゃったね」と話していた。

  このような状況が続けば、数年後にはコンビニの雑誌コーナーの大幅な縮小、もしくは完全な撤去も現実味を帯びてくる。ある大手出版社の社員は危機感を募らせ、「いよいよ雑誌文化が終わるかもしれない。紙の雑誌がこの先バタバタとなくなっていきますよ」と話す。日本の雑誌や書籍の文化はどうなっていくのか。今後に注目が集まっている。

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