【漫画】読み進めると主人公が消えてしまう? 漫画ならではの技巧&メタ表現に驚かされる『18ぺージの私』

ーー創作のきっかけを教えてください。

抽子:本作は2年前に台湾の漫画コンテストで投稿しようと思い創作した作品です。ただ当時は作品を創作したものの、完成した作品は応募規定のページ数に足りず、実際に投稿することはありませんでした。

 それから時間は経ちましたが、当時の悔しい気持ちをずっと抱いていたので、改めて漫画を描こうと思いました。その際にページ数を稼ぐため、真ん中に余白のある漫画を描こうと思い、本作を創作しました。

ーー本作を描くなかで印象に残ってるシーンは?

抽子:7ページ目の「私は自由だ」と話すシーン、そして18ページ目の「ありがとう」という台詞です。たしかに主人公は自由な存在ではありますが、メタ的に見ると主人公は漫画という枠、コマの外へと世界を超えることはできておらず、まだ彼女は漫画の中に縛られています。

 ただ本作の最後には「ありがとう」と言いながら、漫画やコマといった枠から解放されたーー。主人公の感謝はページを読み進め、自身を開放してくれた読者への感謝です。

ーー序盤に描かれた風景の描写は開放感を覚えるものでした。

抽子:漫画はどんな世界でも描くことができ、どんな場所でも行くことができるものだと思います。本作の序盤でもさまざまな風景、水平線が広がる景色などを描くことで、漫画や主人公の感じる自由な感覚を表現したいと考えていました。

ーー本作全体のページ数を18ページにした思いは?

抽子:余白のある漫画を創作しようと思ったなか「18」という数字が「18歳」としての意味をもつ記号だと感じたからです。18歳というタイミングは多くの人が学校を卒業して、少年・少女が大人になる区切りでもあるでしょう。主人公の繊細な心情やその変化を表現するために「18」という過程を踏むことが意味を持つと考えていました。

ーー漫画を描きはじめたきっかけを教えてください。

抽子:もともとイラストの作品を多く描いていました。ただイラストだけでは伝わらない気持ちや物語を伝えたいと思うときもあり、その思いを表現するため漫画を描きはじめました。

ーーイラストなどの創作活動と比較し、漫画を描くことの魅力は?

抽子:イラストは瞬間的な場面を切り取り、描くことのできる創作だと感じています。対照的に漫画は時間の流れを表現できる創作だと思います。またアニメーション作品とは異なり、読者自身で読み進めるペースを調整しやすい点も魅力でしょう。 

 たとえば本作の終盤、空白のページがつづく場面では、読み進める手を休め、主人公がどこへ行ってしまったのか考えることもできると思います。

ーー今後の活動について教えてください。

抽子:本作のような表現スタイルはなかなか受け入れられないだろうと思っていましたが、想像以上に大きな反響を呼び、驚いています。そのため、もっと個性的な構成や表現の漫画をつくりたいです。

 漫画だけではなくイラストや写真の創作もつづけながら、自分の思いや感情が少しでも伝わればうれしいです。

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