『呪術廻戦』五条悟は乙骨憂太に救われたのかーー“現代最強の術師”が背負っていた苦しみ
最強ゆえに孤独になってしまった五条悟
とはいえ、努力のはてに怪物のような強さを手に入れた五条だが、それが本人にとっていいことだったのかどうかは分からない。皮肉なことに、他の誰にも理解できない絶対的な“孤独”に陥ることになったからだ。
過去編の「懐玉・玉折」では五条が夏油傑と共に最強の2人として活躍するところが描かれたが、途中で道を分かつことになり、最終的に夏油から“私は君になれない”といった態度で突き放されていた。最強の呪術師になったからこそ、共に歩める仲間を失ってしまうという悲哀がそこにはある。その後五条は「強く聡い仲間」を育てるために教育者になったものの、最後まで孤独が癒されることはなかった。
あえて対比的に考えるなら、そんな五条とは正反対の生き方を送っている術師が乙骨だ。仲間たちと修行を重ね、仲間たちを守るために戦ってきた術師であり、特級術師の1人になった今でも孤独とは無縁の境遇にある。そもそもその能力が“他人の術式をコピーする”というもので、自分ではない誰かの存在を前提としていることも、乙骨の性質をよく表しているように見える。
宿儺との戦い方を見ても、2人の違いはハッキリとしており、五条は最後まで1人で戦い続けたが、乙骨には共に戦う仲間がいた。
ただ、だからといって五条に救いがなかったとも言えないだろう。乙骨は五条を孤独に戦わせることを拒否し、その肉体に乗り移ることによって、共に戦うという態度を示してみせた。ある意味では乙骨は五条を孤独から解放することができたのではないだろうか。
現代最強の術師がよみがえり、仲間たちと力を合わせながら牙をむく……。そうした構図だからこそ、五条と乙骨のリベンジマッチは感動的に見える。最強の2人は今度こそ宿儺を討ち取ることができるのか、次回以降の展開に注目したいところだ。