漫画家のペンネーム、成人向けと全年齢向け作品は使い分けるもの? 漫画編集者はどうみる?

■あの有名漫画家が成人向け漫画を執筆?

photo:miika laaksonen(unsplash)

  声優が成人向けの作品と、一般向けの作品で名義を使い分けることは普通にはあったが、漫画界でも同様の事例はある。成人向けの漫画を描いていた漫画家が一般向けの雑誌で描く際にペンネームを変更したり、その逆パターンもある。漫画家によっては何本もペンネームを使い分け、しかも作風も描き分けるなど、器用なテクニックを見せる例も少なくない。

  現在、「【推しの子】」を連載している横槍メンゴもかつては成人向けの漫画を手掛けていたし、「週刊少年ジャンプ」で『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』を連載した西義之は現在、成人向け漫画も手掛けるなど多彩な作風を見せている。しかも、西は成人向け漫画でもヒットを出しており、『魔女は結局その客と。。。』はアニメにもなった。

  両氏は成人向け漫画でも一般向け漫画でも、ペンネームを変えずに執筆している希有なケースといえる。しかし、最近はエゴサーチが一般的になったこともあって、やはりペンネームを変えて執筆している漫画家のほうが多い印象だ。

  名前を出すことができないが、ある少女漫画雑誌で連載をもっていた某漫画家は、現在、別ペンネームでBL漫画を描いてヒットしている。わかる人には絵柄でわかってしまうのだが、新しい読者を獲得して人気を得ているようだ。少女漫画誌に連載をしていた漫画家が成人向け漫画に転校する場合は、「夢を壊さないように」という思いで、ペンネームを変えるケースが多いようである。

■画力も表現力も高い漫画家は成人向け漫画向き

  大手漫画雑誌で連載をもった漫画家は、成人向け漫画でも重宝される傾向にあるという。中堅出版社で成人向け漫画の単行本を編集する編集者は、このように話す。

 「ジャンプの連載作家が、大人向け雑誌の『週刊漫画ゴラク』で連載をもって話題になりましたよね。とにかく、連載経験者は即戦力になるんですよ。それは成人向け漫画であっても変わりませんし、より重要かもしれません。というのも、成人向け漫画は高い画力と表現力が求められるためです。連載経験者はその点で申し分ないし、かわいい女の子やイケメンを描く能力が突出していますからね」

  成人向け漫画は電子書籍との相性が良く、書店に並ばないものの数万部のヒットとなっているタイトルが珍しくなく、なかには10万部超えのベストセラーになっている作品もあるという。そうした市場は漫画家にとっても「かなりおいしいと思います」と、先の編集者。そのため、あっと驚くような連載経験者が持ち込みに来るケースもあるようだ。

  漫画家は人気商売なので、読者に受け入れられなくなってしまうと無常にも打ち切られてしまう。しかし、その一方で画力と気力があれば活躍の場が多いのも事実。少子化が進んで子ども向け漫画が奮わない一方で、成人向け漫画が漫画家の受け皿になっている一面もあるのかもしれない。

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