【webtoon試し読み】『神血の救世主』はなぜ“最強”なのか? アニメ化が期待される国産バトルファンタジーの金字塔

 現在、マンガ表現のトレンドになっている縦読み&フルカラーの「webtoon」。韓国を中心に海外勢の躍進が目立つ同ジャンルだが、国産作品として目覚ましいヒットを続けているバトルファンタジー作品がある。気鋭の制作スタジオ「Studio No.9」によるwebtoon第一弾作品として誕生した『神血の救世主~0.00000001%を引き当て最強へ~』(原作・ネーム:江藤俊司/線画:疾狼/背景:3rd Ie/着色・制作:Studio No.9、以下『神血』)だ。2022年9月よりLINEマンガで先行配信を開始し、2024年4月にはLINEマンガ他ストアでの国内累計合算閲覧数は1億ビューを突破。まさに破竹の勢いでファン層を拡大している。

 その内容はというと、設定から極めてキャッチーだ。舞台となるのは、「異界」とつながる扉が出現し、そこから現れる生物に脅かされるようになった世界。唯一の希望はそれに対抗する能力を持つ「プレイヤー」で、その力を得るためには不意に現れる「試練の扉」に入る必要がある。「試練の扉」には金、銀、銅とランクがあり、能力に顕著な差が出るというソーシャルゲームのような世界観で、主人公はこれまで確認されていなかった虹色の扉と出会い――というところから、物語は大きく動いていく。

 画面をスクロールする手に力が入ってしまうのは、本作にはチート能力による「無双」モノという爽快感も含みながら、一方で「リベンジ」モノの側面が強いからだ。主人公の有明透晴(ありあけ・すばる)は高校でいじめられており、家でも虐げられている。

 実は5年前、大きなチャンスがあった。透晴少年の前に、なんと金色をした試練の扉が出現。世界を守る憧れのプレイヤー、それも「金」の力を持った英雄になれると目を輝かせた透晴だが、しかし血のつながらない弟の大我が彼を突き飛ばし、横から奪い取る形で力を手に入れてしまった。元々の横暴な性格に拍車がかかった大我と、それをもてはやす両親。透晴の人生は異界のモンスターと対峙するまでもなく真っ暗なものになったが、力に溺れた下級のプレイヤーたちに追い詰められたとき、運命が変わる。そう、虹色の扉が目の前に現れたのだ。透晴は2度目のチャンスを逃さず、恐るべき力を手に入れる――。

 第一話にアクセスすれば最後、最新話までジェットコースターのように読み進めてしまう人が多いだろう。そのためネタバレは最序盤までに控えるが、キャッチーな世界観、リベンジ作品のカタルシスに加えて、それぞれのプレイヤーに与えられた能力が面白い。

 例えば、透晴が虹色の扉で獲得したのは「血液を自在に操る」能力だ。いわばUR(ウルトラレア)の扉で得た基礎力は極めて高いものだが、スキル自体はそれだけで他を圧倒する「無双」につながるものではない。工夫次第で大きな力を発揮する汎用性の高さがあり、それが力に溺れず、考え続ける透晴のパーソナリティにマッチしている。近年で多くのヒット作を生んでいる「異能バトル」系作品の系譜としても、ユニークな魅力を持った作品と言えるだろう。彼にとって初めての仲間で、同じく悩みを抱えて生きてきたある少女の能力も、「使い方次第」で絶大な威力を発揮するものになっており、出会いや気づきで人生は大きく好転させられる、という力強いメッセージも感じられる。

 『神血』は気弱で優しく、しかしヒーローに憧れた少年が世界を救う物語だ。「プレイヤー」になって初めて、小さな自由を謳歌する透晴の姿に共感しながら成長を見守っているうち、バトルが激化し、読者もその苛烈さに巻き込まれていく。まずは第一話を読み、早期のアニメ化も期待される“国産webtoon”の実力を体感してほしい。

『神血の救世主~0.00000001%を引き当て最強へ~』
作品URL:https://lin.ee/TBCgpbf/pnjo
コピーライト:©江藤俊司/疾狼/3rd Ie/ナンバーナイン

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