「これは反面教師」“一番キケンなグルメマンガ”『ドカ食いダイスキ!もちづきさん』凄い高カロリーを検証
ドカ食いじゃないと多幸感がない
今までにない衝撃的な“ドカ食い女子”を爆誕させ、グルメマンガの新次元を切り拓いている異色作『ドカ食いダイスキ!もちづきさん』。明らかに健康リスクが高そうな食事描写が賛否両論を呼んだり、「逆に反面教師になる」と絶賛されたりと、さまざまな反応を巻き起こしている。そこで今回は、作中に登場する“限界グルメ”の内容に焦点を当てる形で同作のレビューを行ってみたい。
なお、念のため本稿が健康を害するドカ食いを推奨するものではないことは先に断っておこう。
同作は5月9日から『ヤングアニマルWeb』で連載が始まった作品で、すぐさま口コミによって爆発的に拡散され、X上で日本トレンド1位を獲得することとなった。なぜそこまで大きな注目を集めたかといえば、その理由はひとえに食事描写の異様さにあるだろう。
主人公の“もちづきさん”は21歳の営業事務で、ドカ食いによって生きる喜びを感じるという女性。作中では彼女が欲望のままに料理を食べる姿が描写されていくのだが、そのメニューがとにかくすごい。
まず一食目のランチ「鶏もも肉の照り焼き弁当」は、濃縮タイプのめんつゆ(ボトル半分)に一晩漬けこんだ鶏もも肉を焼き、米に乗せた上で、「血液が塩水になりそう」な量のマヨネーズをかけたものだ。そして仕事で飢餓状態になった後、夜食としていただいたのは「2倍サイズカップ焼きそば」にたっぷりマヨネーズをかけたもの×2個分。前者は1,775kcal、後者は2,760kcalのメニューで、さらにランチでは210kcalの「コンビニのクソデカもも水」で水分補給を行っていたため、1日の合計は4,745kcalとなる。
ちなみに厚生労働省が公表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、個人間の差が大きいものの、18~29歳の女性が1日に必要な推定エネルギー量は1,700~2,300kcalとされている。
もちづきさんは、食後に満腹感と高血糖によって酩酊することを「至る」と表現しており、うつろな表情のまま意識を失うような描写もある。ドカ食いした後に眠気に襲われる現象の“レベルマックス”の境地に至っているような印象だ。
血糖値が急上昇するような食習慣は、一般的に動脈硬化や糖尿病のリスクがあると言われているため、同作に対して「読者に悪影響があるのではないか」と指摘する声もないわけではない。
ただ、あくまで作者はドカ食いを美化しているわけではなく、むしろ危険な行為として描いている。率直に言うと、もちづきさんはちょっとした“異常者”として描写されているのだ。入浴後に服を着る時間すら惜しみ、バスタオルを巻いたまま米4合のオムライスをかきこむ姿に共感できる読者は、決して多くはないはずだ。