芸人・井上マーに聞く「サッカー本大賞2024」の魅力「サッカーを軸に人生の大切なことがわかってしまう」

■井上マーさんオススメのサッカー本は?

――今回のサッカー本大賞に限らず過去の本でもいいんですけど、これまでマーさんの読んできたサッカー本で強く心に残っている本などはありますか。

井上:僕はサッカー文化、サポーター文化とか、暮らし、カルチャー、価値観みたいなのが好きで、特に日本サッカーなんですけど、昔から宇都宮徹壱先生の本がすごく好きで2017年のサッカー本大賞受賞の『サッカーおくのほそ道 Jリーグを目指すクラブ 目指さないクラブ』(カンゼン)はオススメですね。日本のサッカーを地域ごとに下支えしてる部分と応援する人たちの話とか、日本にもそういうドイツ文化みたいな格好いいグラスルーツの文化あるじゃん!みたいなのを宇都宮先生が引っ張り出してくれているので、なんか豊かな気持ちになるし、サッカー好きとしてこういう話しながらお酒を飲んでる時間が好きだなって思っちゃう(笑)。

――たしかにそれぞれの地域に根差したサッカー文化っていいですよね。

井上:あとは2019年のサッカー本大賞を受賞した津村記久子さんの『ディス・イズ・ザ・デイ』(朝日文庫)はもう言うまでもなく、サッカー好きのツボも入っていてひとつひとつの話を全部映画にしてほしいぐらいのいい話。それで言うと2022年のサッカー本大賞読者賞の『サムシングオレンジ 1〜4巻』(藤田雅史・著/新潟日報社)はアルビレックスサポーターのいろんな風景を描いた小説の短篇集なんですけど、実際にあった試合にノスタルジックな時代の流れとか乗せたお話っていう、サッカー好きな人が書いてるなーっていうのがたまらないですね。

――サポーター目線のサッカー本はかなり痺れるものがたくさんありますね。

井上:あとクラウチの本も大好きですね。『クレイジーフットボーラーズ ピーター・クラウチが明かす プロサッカーの裏話』(村瀬隆宗:訳/イカロス出版)ていうピーター・クラウチ(プレミアリーグに通算18シーズン所属した元・イングランド代表)が書いた本で、海外のロッカールームで起こった醜聞というか、悪口とかも含めてスタンダップコメディアンのネタ帳みたいな本だったんですけど、クラウチひょうきんなやつで(笑)。あのゴールパフォーマンスのロボットダンスも笑わせようとしてやってたんだとか、自分を落とすことでちゃんと笑わせるなんてコメディアンの発想だなと思って。なんかシニカルで、なにこのヨーロッパのユーモア!みたいな。ほんと「フットボール・スタンダップコメディ」なんですよ。

  日本でフットボールスタンダップコメディやってもフットボールファンしか笑えないですけど、これでイギリスの国民の多くが笑える文化は羨ましいなと思いましたね。結構厚い本だったんですけど夢中になって読みました。サッカー本を読み漁るとこういう素晴らしい本に出会えるんですよね。

■サッカー本の効能は?

――マーさんはサッカーに関するお仕事も多くされてますが、サッカー本を読んでいて役立っていることなどありますか?

井上:やっぱりサッカーをより好きになれるというか、自分のサッカー好きってどんなところなんだろう、どういう角度でサッカーを愛してきたんだろうっていうのがちょっと意識的になるかもしれないですね。文化とかカルチャーを知ったりとか、そういうのにショックを受けて「おおー」とか思ったりすることが結構好きなんだなっていう。これまではピッチ内のこととか「どうせわからないし」って思ってたんですけど、毎年読んでたら「あれ?ちょっとわからないなりにも面白くなってきたぞ」と思って、役に立っていると思いますけどね。

――選手がどう思ってるか自分はサッカー選手ではないけれども、サッカー本を読むことで実際の試合で少しでも選手や監督の考えや思いを想像できるようになるとか

井上:そうですね、ご苦労がわかったりね。サッカーは11のポジションがあってそれぞれのポジションで個性をどう生かすかみたいなところがあるじゃないですか。だから自分のポジションをどうやって見つけるのか、自分の至らないところとか自分の数奇な運命とどう向き合って自分の長所を生かして、どうやって未来を切り開くのかみたいなのが、なんとなくサッカーというのに流れるモノだったりするので、ちょっと背中を押してもらえるような勝手にモチベーションになるような本だと思って読んでるところはありますね。

  森保さんの本もいろいろ言われている中で結果出した男の仕事論みたいに読むこともできるし、試合を振り返っているだけなのに、勝手に途中で泣けたりとか、自分で味付けしていろんなお弁当を食ってるみたいなところはありますね(笑)。

プロフィール:井上マー

1976年2月8日生まれ、栃木県宇都宮市出身。吉本興業所属。1997年、大学在学中にデビュー。2005年、R-1ぐらんぷりで準優勝。現在は、とちぎテレビ「教えてイイトコうつのみや」に出演する他、サッカーの試合実況やeスポーツのゲーム実況などを務めている。

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