インネパ系カレー屋、日本全国に4000~5000軒もあるのはなぜ? ネパール人が育んだ独自の料理体系の謎

 正直、自分もインネパ系カレー屋には辟易しているところがあった。どこに行っても似たようなメニューばかりで、日本人向けにチューンされ過ぎていて食べていて面白くない。最近増えてきた南インド系の店や、他国のエスニックな料理をそのまま出す店の方が食べていて楽しいじゃないか……と思っていたのである。しかし本書を読むことで、「インネパ系カレーは日本の国柄と移民のダイナミズムによってできた独自の料理体系であり、これはこれで独特のスタイルなのではないか」という気持ちになった。

 そもそも自分はパンダエクスプレスが日本にできた時には「本場のアメリカ風中華ってこんな感じか〜」とか言って大喜びで食べていたわけで、アメリカン中華の成立経緯はインネパ系カレーとさほど違わない。そう思えば、そこらじゅうにあるインネパ系カレー屋も、ダイナミズムによって生まれた日本独自の飲食店といっていいはずで、食べて面白いと感じるかは目新しいかそうでないかだけで決まっていたのではないか。そうか、おれは情報を食べていただけなのか……食通ぶって……。

 もちろん、情報は世界で最もうまい食べ物のひとつなので、それを「うまいうまい」といって食べること自体は当たり前である。むしろ本書によって情報が公になることで、今まではちょっと避けていたインネパ系の店も楽しむことができそうだ。誰が読んでも面白いと思える本だと思うが、すれっからしのインド料理マニアやエスニック好きにも、カレーをおいしくする新たなスパイスとして特に本書をオススメしたい。

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