世界一稼げるフットボーラーに、俺はなる? “金”をテーマにした異色のサッカー漫画『ナリキンフットボール』が熱い

 1993年に日本に誕生したプロサッカーリーグ「Jリーグ」。最上位であるJ1リーグの選手平均年俸は約3300万円とされる。しかし、2部に落ちれば平均額は500万にまで激減。3部に至っては約300万とサラリーマンの平均年収をも下回る水準だ。トッププレイヤーになれば夢があるが、プロスポーツである以上、現役のうちに稼がないといけないこともまた事実。そんな「サッカー」と「お金」という斬新な切り口で描かれるサッカー漫画が『ナリキンフットボール』(原作:清水 海斗/漫画:明石 英之 )だ。

 本作の主人公、J1リーグ「東京レックス」所属のディフェンダー鼓屋我王(つづみや・がおう)はリーグ優勝がかかった1戦を前にして、株価の変動をつぶさに確認しているという一風変わったサッカー選手だ。現役時代からの副業も推奨しており、良く言えばマネーリテラシーが高い。

リーグ優勝から一転、契約満了

 我王の地味な活躍もあり、見事リーグ優勝を果たした東京レックス。翌年の年俸アップに期待を膨らませながら契約更改に訪れた我王に告げられたのは、契約満了、つまりクビだった。表向きは優勝したことによる各選手の市場価値が高騰したことによる資金難が影響してとの説明だったが、本当の理由は「金にならない選手とは契約したくない」から。

 地味なDFと観客受けの良い派手なドリブラーでは金のかけられ方が違う。そんな残酷な現実が我王に降りかかったのだ。その後、唯一オファーのあったJ2リーグのクラブ「北九州モンキーズ」と契約を交わした我王は、大幅に人生設計が狂ったことを嘆きながらもJ2の舞台から再起を図ることとなる。

世界のサッカーお金事情

 ここで世界のサッカーリーグのお金事情にも目を向けておきたい。2024年現在、世界で最も平均年俸が高いリーグはイングランド・プレミアリーグだ。年俸平均は約4億円。ビッグクラブになれば平均年俸が10億を超えることもある。莫大な放映権料を資金源に、世界中から有力選手が集まってくる世界最高峰のリーグである。

 その他の欧州トップリーグもスペインのラ・リーガ、イタリアセリエA、ドイツブンデスリーガといった欧州5大リーグでは平均で2億円を上回る高額の年俸が選手に支払われている。文字通り、フィールドには是にが埋まっているのだ。

 現代サッカー界ではかつて創造性に溢れた芸術的なプレーで観客を魅了した「ファンタジスタ」と呼ばれるタイプのプレーヤーは絶滅危惧種となりつつある。ピッチ上は身体能力に優れた選手で溢れ、プレースピードも格段に増している。プレー強度が上がり、組織的な守備により空間も限られた中で、フィジカル偏重になっていることは否定できない事実だ。

 そんなフィジカル重視の流れが続くサッカー界にありながら、我王は移籍先のJ2のクラブでも体力テストの成績はダントツの最下位。日本1のチームからやってきた選手がどれほどのものかと内心ビビっていたチームメイト達が拍子抜けしてしまう程の低レベルだ。

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