少年漫画のラスボス戦は盛り下がる説を覆す? 『ジョジョの奇妙な冒険』“最高潮の盛り上がり”を検証
『ジョジョ』のラスボスが人気なのはなぜ?
ラストバトルに最大の盛り上がりを持ってくる『ジョジョの奇妙な冒険』のストーリー構成は、第6部「ストーンオーシャン」で1つの到達点を迎えたように見える。アメリカの刑務所で始まった小規模な物語が、世界全体を巻き込んだ壮大な戦いへと発展していくのだが、その流れはあまりにも洗練されていた。
第6部の展開をざっくりまとめると、理不尽に刑務所に入れられた主人公・空条徐倫が脱獄を目指していくというもの。その過程でさまざまな敵との戦いが描かれるのだが、すべてはラスボスにあたるプッチ神父の陰謀であり、ストーリー全体がラストバトルに向けた壮大な“前フリ”となっている。
徐倫が承太郎の娘であるのに対して、プッチ神父はかつてDIOの親友だった男。2人のあいだには濃厚な因縁があり、ある意味『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズを総括するような宿命の戦いだ。そしてプッチ神父は、相手のスタンドと記憶をDISCにして抜き取る「ホワイトスネイク」、重力を自在に操る「C-MOON」、時間を加速させる「メイド・イン・ヘブン」と、この上なく強力な能力の持ち主であり、ラストバトルでは少年漫画で一度も描かれたことがないような衝撃の光景に至るのだった。
またラストバトルの盛り上がりという意味では、ラスボスたちがいずれも魅力的なキャラクターであることも関係しているだろう。DIOは悪役でありながら、圧倒的な人気を誇っているが、ほかにも第2部「戦闘潮流」の究極生命体カーズ、第4部「ダイヤモンドは砕けない」の奇妙な性癖にとりつかれたサイコパス・吉良吉影、第5部「黄金の風」のギャング組織を牛耳る正体不明のボス・ディアボロなど、強烈な存在感を放つキャラクターが揃っている。
個性だけでなく戦闘力に関しても、ラスボスたちは“唯一無二”であることを読者に納得させる仕掛けが周到に用意されている。たとえばディアボロには、第3部から再登場した凄腕のスタンド使い・ポルナレフを一蹴するエピソードがあり、それまで作品を追ってきた読者がキャラクターの格を瞬時に理解できるようになっていた。
バトル描写でもキャラクター描写でもラスボスの存在を上手く印象付け、ストーリー全体の盛り上がりどころをコントロールする……。それこそが作者・荒木飛呂彦の“すごみ”ではないだろうか。
現在連載中の第9部「The JOJOLands」では、まだラスボスの存在がはっきりしていないが、歴代の人気者たちに並ぶような“悪のカリスマ”が爆誕することを期待せずにはいられない。