赤楚衛二「演じた役が僕の中で生きている」作品に影響を受けながら多様な顔を見せたインタビュー&フォトブック

自分を見つめ直してフラットになれた

――4月からは主演ドラマ『Re:リベンジ-欲望の果てに-』が放送されることが発表され、ますますお忙しくなりそうです。本書の中で、「やっぱり作品の真ん中に立ちたい気持ちはあります」とおっしゃっていました。主演をつとめることも増えてきましたが、何か意識の変化はありましたか?

赤楚:『こっち向いてよ向井くん』のとき、自分には足りないところだらけだなって思い知らされたんですよね。だから『Re:リベンジ』では、芝居だけじゃなく、ちゃんと周りの方たちを見て配慮できるようになりたいです。だからとりあえず、差し入れはいっぱいしなくちゃ(笑)。

――(笑)。

赤楚:それに、主演といっても、今はまだ真ん中に「立たせてもらっている」感覚が強いんですよね。周りの方たちに支えてもらって、ようやく立つことができているんだ、と。スターと呼ばれる方たちは周囲を引っ張っていく強さがあるけれど、僕はそこには及んでいない。みなさんに感謝しながら、この人が主演でよかったと思ってもらえるために何ができるか、一つひとつ考えていくことしかできないんですよね。

赤楚衛二インタビュー&フォトブック『E』
撮影:宮脇進
ワニブックス刊

――荒ぶり期があったなんて信じられないほど、お話を聞いているとフラットな感覚をお持ちで、ご自身のことも冷静にとらえていらっしゃいますよね。

赤楚:理想を高く持ちすぎると現実とのギャップが生まれて、ネガティブな感情に引きずられてしまいますからね。これならできるはずだと思っていたことができないと落ち込みますし、周りのすごい方たちと比較して落ち込むのもつらいけど、こうありたい、あれるはずだと思っている自分と比較してだめな自分を思い知らされるのもつらい。そういう落ち込みを繰り返して、自分は自分でしかないんだってあきらめた途端、フラットに物事をとらえられるようになりました。

――何かきっかけがあったんですか?

赤楚:いろんなところでお話しているんですけど、コロナ禍で緊急事態宣言が出て、ぽっかり時間ができたときに、自分を見つめ直すことができたんです。なんだかんだいって、やることはやってきたし、頑張ってきたじゃん、って。そうしたら、自分のことが嫌いじゃなくなりました。その視点が生まれたからこそ、芝居も客観的に向き合えるようになったのかもしれません。

――フラットかつ、物事を俯瞰的にとらえることのできる方なんだなというのは、本書に収録された3人のプロフェッショナルとの対談でも感じました。江戸切子の職人、字幕通訳者、JAXAで宇宙飛行士の支援をする方。どれもおもしろかったです。

赤楚:いい経験でした。世界を見る目が変わった……というより、視点が増えたというのかな。技術の裏に込められた思いや歴史を知ると、とんでもなく深みのある存在として伝わってくる。

 僕の友人に建築の仕事をしている人がいるんですけど、ふだんの生活でもふとした瞬間に壁の材質とか気にしていたりするんですよ。人それぞれ、所属する分野によって見える世界の解像度は違う。僕がこれまで素通りしてきた場所に、とんでもなく豊かで素敵なものが潜んでいるんだと知ったら、ものすごく楽しくなりました。世界って、おもしろいなって。

書き手の人格も想像するほど読書好き

――赤楚さんは、職業病みたいなものはありますか?

赤楚:街中でカメラを向けられるとドキッとしちゃうけど、そういうことじゃないですよね(笑)。僕じゃなくて風景を撮っているんだってわかっていても、つい身構えちゃうんです。あと……人狼は上手いかもしれないってことくらいかなあ(笑)。自分では無意識だからわからないです。

――言葉に対する感度が高いのは、職業病みたいなものなのかなと思ったりもするんですけど。言葉選びがとても素敵ですよね。

赤楚:ありがとうございます。それも自分じゃ全然わからない(笑)。もともと小説とか本を読むのが好きなんですけど、ここ数年、全然手に取れていなくて……。忙しいからというより、影響されすぎてしまうんですよね。もともと文章を読むと、書き手の人格も想像しちゃうっていうか、奥の奥まで潜り込んでいくのが好きで、いいなと思った文章は真似て書いたりもしていたんです。役以外でそういうことをすると気が散っちゃうから、読むのは控えているんですよね。

――ああ、でもそういう方だから、言葉が内側に蓄積されているんでしょうね。朝ドラで歌人を演じられたのも、納得です。演じた役の言葉も、一つひとつ吸収されているような印象があります。

赤楚:演じることで、その役の人たちが僕の中で生きている部分はありますからね。最中は全然わからないけど、顔つきがそのつど変わるというのは、そういうことなのだろう、と。

――先日、30代を迎えられましたが、今後10年をどんなふうに歩んでいきたいですか?

赤楚:これまでと同じじゃないかな、と思います。たとえば自分の意見を通すときに、相手の意見をいったん受け止めてから提案する、みたいな大人の振る舞いはできるようになったし、自分なりに成長はしているんだと思いますけど、この先も壁にぶつかって苦しむことを繰り返さなければ、幅は広がっていかない。だから、不安です。立場が変わるにつれて責任も大きくなるし、目配りしなきゃいけない範囲も広がるから。

 でもまあ、ネガティブなことばかり気にしていても人生楽しめないので、少しずつ成長している自分、経年変化する自分を楽しめる自分であれたらいいなと思っています。

ヘアメイク:廣瀬瑠美
スタイリスト:壽村太一

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