鳥山明 『ドラゴンボール』連載終了後の短編作品に言及 通好みの名作『SAND LAND』はいかにして生まれたか
■『ドラゴンボール』を経て作風が変化
3月4日、『ドラゴンボール』などで知られる漫画界のレジェンド、鳥山明の読切作品『SAND LAND』プロジェクト発表会が開催された。合わせて、鳥山氏のコメントが公開され、ネット上でも注目が集まっている。鳥山といえば新作アニメ『ドラゴンボールDAIMA』も近々公開予定であり、やはりコメントが話題になっている。
今回のコメントで注目すべきは、『SAND LAND』を筆頭に、『ドラゴンボール』の連載終了後に発表された短編作品についても言及している点であろう。しかもかなりの長文なのだ。鳥山は、「『ドラゴンボール』というやや派手な作品の反動もあって、短編や読み切りはどれも、好みである小さな世界とゆるいヒーローのなんでもない地味で平和な話ばかりを描いてきました」と発言している。
比較的ゆるい物語として始まり、ギャグの要素も多かった『ドラゴンボール』だが、ピッコロ大魔王編以降はシリアスで本格的なバトル漫画へと変化していった。サイヤ人編やフリーザ編になると、初期の頃のようなギャグはほとんど見られなくなった。こうした反動が、その後の創作に大きな影響を与えたようである。
■鳥山の短編作品は名作ぞろい
ところで、鳥山は『ドラゴンボール』をはじめ、『Dr.スランプ』などの長期連載になった作品が有名だが、実は短編の名手でもある。デビュー作から、「週刊少年ジャンプ」の愛読者賞などで描かれた作品をまとめた、『鳥山明〇作劇場』という短編集も3冊刊行されている(2巻には『ドラゴンボール』の原型になった『騎竜少年(ドラゴンボーイ)』も収録されている)。
連載終了後に発表された短編作品は『COWA!』や『カジカ』などで、それぞれ単行本ちょうど1冊分であるが、コアな鳥山ファンからは人気が高い。そして、『SAND LAND』も基本的に地味で平和な内容と述べつつ、「さすがにこれではアクション作品として厳しいと思われたのか、アニメスタッフの皆さんには、いろいろ派手な仕掛けをプラスして演出に重厚感を加えていただきました」とアニメの制作の裏話を披露し、「新キャラである天使のムニエルの設定とデザイン、アンなどのデザイン、エピソードなどを提案させていただき、続編が完成しました」とコメントした。
鳥山は近年、映画作品にも原作やキャラデザで積極的に参加しているが、『SAND LAND』はかなり鳥山の手が加わっていることがわかる。鳥山のお気に入りの作品であることがうかがえる。
鳥山はキャラクターデザインやメカデザインの上手さも突出しており、凝り性である。『鳥山明〇作劇場』には締切の中で必死に描いた作品から、息抜き感覚で描いた作品まで多彩な漫画が収録されているが、特にメカデザインには鳥山の趣味が色濃く出ている。稀代の画力の高さを誇る鳥山をより深く知るには、短編作品をぜひともおすすめしたい。
【写真】注目集まる『SAND LAND』のキャラクタービジュアル
©バード・スタジオ/集英社 ©SAND LAND製作委員会