「勝手に公開された」SNSの顔出し問題 弁護士に聞く、犯罪現場での顔出し投稿は許される?

■SNSの肖像権侵害問題

photo:Anton(Unsplash)

 SNSが普及して久しいが、SNSのメリットといえるのは、誰でも気軽に写真を撮影してネットに投稿できる点である。こうした特性から、内部告発や犯罪の報告などにも役立っている。今まで声を上げることができなかった立場の人が声を上げる場として、有益である部分が多いのは間違いないだろう。

 その一方で、明らかに肖像権の侵害ではないか、これはやりすぎではないかと眉を顰めるような投稿が見られるのも事実だ。例えば、コロナ騒動が巻き起こっていた時期には、電車内でマスクをつけていない人の顔写真を勝手に撮影し、投稿する例が相次いだ。いわゆる“マスク警察”の過激版であり、もちろん許可を得ずに勝手に投稿している。そういった行為には多くの批判的なコメントが寄せられていたが、「マスクをつけない奴が悪い」などと、マスク警察を賞賛する人も少なくなった。

 マスク警察は“マナー警察”の一種だが、マナー警察は自分たちが正義だと思っているため、こうした投稿をする傾向が大きいようだ。駅で唾を吐いていたとか、禁煙の場所でタバコを吸っていたとか、電車の中で暴言を吐いていたとか、そういう人にはその場で注意すればいいものを、わざわざ撮影してネットにばらまくのである。カメラがついているスマホとSNSを人々が手にしたことで、現代の日本は江戸時代の村社会を遥かに超える監視社会・密告社会になっている。このような“私刑”は問題がないのか。弁護士に話を聞いた。

 「はっきり言って問題があります。肖像権の侵害ですね。肖像権には“その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由”があると規定されています。ただ、訴えたところで高額な賠償金がとれるわけでもないし、泣き寝入りになることがほとんどなんですよ。それに、一度ネットにUPされてしまうと、勝手に拡散されて画像が残ってしまう。デジタルタトゥーといいますが、こうなると完全にネット上から削除することは困難です」

関連記事