2024年も注目のギャンブル漫画『ジャンケットバンク』 物語を彩る個性派ギャンブラー5人を徹底解剖
2020年7月より「週刊ヤングジャンプ」にて連載を開始したギャンブル漫画『ジャンケットバンク』。2023年には第6回「アニメ化してほしいマンガランキング」で8位にランクインし、この1月からは池袋ナンジャタウンで初のコラボイベントが予定されるなど、2024年も注目の作品だ。
本作の魅力については以前の記事「『ジャンケットバンク』人気の秘密はテンポにあり? 新世代ギャンブル漫画の魅力を解説」(https://realsound.jp/book/2023/11/post-1491207.html)でも紹介しているが、物語の展開や刺激的なギャンブルの内容とともに、ユニークな登場人物にも注目したいところだ。
個性派揃いのキャラクターが多いため、誰をピックアップするか悩ましいところだが、今回は『ジャンケットバンク』の軸を担う5名のギャンブラーを徹底解剖したい。それぞれが他に類を見ない「強さ」を持ち、ギャンブルに挑むスタイルが異なるからこそストーリーの味わい深さが増すキャラクターだ。
御手洗を虜にした謎まみれの天才・真経津晨
真経津は、平凡な銀行員だった主人公・御手洗暉の日常に雷を落としたもう1人の主人公。どんな逆境に立たされても諦めず、相手の意表を突いて勝ち抜く戦闘スタイルが特徴的だ。実力ランクは現在「1ヘッド」。今回紹介するギャンブラーの中では一足先にてっぺんへと上り詰めた。
彼の強みはぶれない精神力と異常なまでの冷静さ。どんなに追い詰められようが敵の煽りには一切耳を貸さず、むしろ巧みな言葉で煽り返す。不利な状況でも心をかき乱す様子を一切見せないのだ。
賭け事の腕前はピカイチだが、それよりも「ルールそのもの」にフォーカスして相手を欺くなど、目の付け所が他者と明らかに違う。群を抜く洞察力によって勝利を掴み取るケースも多く、“天才”の名がこれほど似合う人物はいないだろう。
鼓膜破壊に服毒、凍死寸前など九死に一生を得る恐ろしい体験が相次ぐものの、最終的には優勢に立つのが真経津。ニコニコと穏やかで、おちゃらける普段の顔からは想像のつかない根性マンだ。
ただ胸の内に何を抱えているのかは、未だに分からない。情報を全て暴く刑事ギャンブラー・山吹千晴でさえ真経津の尻尾が掴めず「経歴が全て空白」と困惑した様子で語った。カラス銀行も彼を抱えつつ、3年前に他銀行の賭場を荒らして壊滅させた「デキズマン(装う者)」と疑っているのが現状である。
真実は謎のベールに包まれたままだが、日頃の真経津は冷酷非道とはかけ離れた存在で、ライバルや担当と積極的に交流するなどコミュニケーション能力も高い。退屈を嫌い、面白さをどこまでも追求するので、カラス銀行のような裏の賭場には最もぴったりなタイプと言えよう。
常識ではかれない“非・ギャンブラー”村雨礼二
カラス銀行の賭場に出入りする時点で常識から逸脱しているが、村雨礼二の場合はどこか変態チック。本職は医師で趣味は手術、開腹して人間の本性を暴くことに楽しみを見出す完全な変人だ。銀行内でも気味悪がられており、不健康そうな細身の体と虚ろな目が不気味さを増長させている。
現在のランクは「1/4ライフ」だが、以前は1ヘッドまで進んだ実力者。敵を罠へ誘い込むのを得意としており、村雨の誘導にまんまとハマればもう蟻地獄。じわじわと相手を嬲り、痛めつける戦闘スタイルは彼の性格や在り方を象徴するだろう。
周りに一切流されず我が道を行くため、表情がほとんど変わらないのも相手が苦戦する理由の一つ。読み合いにはめっぽう強く、その落ち着きと堂々たるふるまいは、1ヘッドまで昇格するのも納得だ。
相当な実力を持つがギャンブルを生業にする気はなく「私はギャンブラーではない」ときっぱり言い切っている。医者という軸を定め、危険地帯には足を踏み入れないのが彼のポリシー。真経津のように「面白さ」「楽しみ」だけで行動しない部分にはつい人間らしさを感じてしまう。
オタク気質の大人しいキャラなので一匹狼を貫くかと思いきや、ギャンブラー同士でしょっちゅうつるんでいるので、コミュニケーション能力皆無ではない様子。少々話が通じず、融通も利かないのが欠点だが、不思議なことに仲間たちと打ち解けている。絶対に相容れないように見えた獅子神とは特に仲が良いのか、良き相棒のような存在に。バトル中彼に“気づき”を与えるべく行動するなど、村雨なりに仲間を気遣っているようだ。
常識人はただいま“開眼”中・獅子神敬一
5人の中で、最初に真経津と対戦したギャンブラー・獅子神敬一。賭場で負けた債務者を買い、奴隷扱いをしながら自身を「王」と崇めさせる極悪非道っぷりを見せつけたが、敗北を知ってからは改心。己の弱さを受け入れ、一皮むけた様子で真経津の前に再び現れる。自信のなさから心を守るために横暴を働いていたものの、真の姿は気さくで面倒見がいい青年。現在は問題児揃いの保護者的ポジションに立たされている。
賭け事の腕前は一流だが、かつては確実に勝てる相手としか戦わなかった。繊細な性格と殻を破り切れない現実が仇となり真経津に敗れる。手の甲に負った傷を「自分への戒め」と語り、この出来事をきっかけに前へと進んだ。
さらに獅子神を育てたのは村雨とのタッグマッチ。強敵である刑事コンビ山吹と時雨、そして村雨の強さに飲まれ焦りを覚えるが、試合途中に己の殻を破って“開眼”。見事な勝利を掴み、視野が広がった彼は今までに見えなかったものが目に入るようになる。
臆病さは抜けきれておらず、自身の目覚めを受け入れ切れてはいないものの、着実に一歩ずつ階段を上がっている。銀行員の御手洗のように、常識人はタガが外れると一気に加速する可能性があるので少し心配だが……。今後の成長が楽しみな発展途上のギャンブラーである。