【漫画】人生は太く短く、それとも細く長く? 中学生時代に語り合った級友たちの物語『太き道をゆく人』が心に刺さる

無職の時に描いた作品

――『太き道をゆく人』を制作した当時の状況を教えてください。

きりさお:当時は無職だったため、自分の今後の人生について考える時間が山ほどありました。その中で制作した作品です。

――なぜ「『太く短く』『細く長く』のどちらの人生が良いのか」ということを軸にしたのですか?

きりさお:小学生時代の担任が“太く短い人生”について話をしていたことをぼんやり覚えていました。大人になってからそのことをふと思い出して「“太く短い人生”が果たして幸せなのか」と考えたことがキッカケです。

――登場人物にはモデルがいたのですか?

きりさお:モデルにしたわけではないのですが、私の大学時代の同級生で早逝した人が数人います。その人達は私と比べて遥かに大学生活を楽しんでいる印象でした。自分よりも濃い人生を歩んでいた同世代があっけなく亡くなってしまった事実を知った時、人生についていろいろ考えるようになりました

自身の経験から採用したエピソードも

――メガネの女性がちょくちょくマルチビジネスにハマっていることを話していましたが、なぜその話を入れ込んだのですか?

きりさお:実は若い時にマルチビジネスのたこ焼きパーティーに誘われ、会員になった経験があります。結論から言うと、マルチビジネスは個人的にはオススメできません。しかし、私の人生の中でも印象的な出来事だったので、キャラクターに投影してしまった感じです。

――中学時代、成人式の後、25歳の時、という3つの状況でストーリーが展開されましたが、各時代でセリフなど意識したことはありますか?

きりさお:私は「三つ子の魂百まで」と言われるように人間の根本は変わらないものだと思っています。ですので、4人それぞれの考え方が成長とともに変わっていく一方で、根本的な性格や振る舞いなどは変わらないように意識しました。

――太く短く生きた神沢は、「天寿を全うした」と考えて自分自身の人生に満足していたのかは今ではわかりません。神沢の死について3人が思い思いの考えを口にするシーンが印象的でした。

きりさお:一般的に年を取ってから亡くなった人の葬儀は比較的和やかですが、若い人が亡くなった場合はかなり重い空気になります。ただ、仲の良かった仲間同士なので「建前では喋らずに本音で淡々と話すのが自然かな」と考えて描写しました。

――本作を通してどんなメッセージを受け取ってほしいですか。

きりさお:作品は制作する際に思いを込めることはできますが、読者の読んでいる時の心理状況や生育環境等の背景によって受け取るメッセージは違うと思います。この作品の主人公の女性は「太麺も良いけど長いラーメンが良いよね」と発言していますが、それはあくまでも、その女性の一意見であって、その思想について読者に共感を求めるつもりもありません。

――今後の漫画制作における予定など教えてください。

きりさお:今後も主にコミティアや関西コミティアなどに出展して、漫画やグッズの頒布を通して創作活動に関わっていきたいです。野心としては、細く終わらずにせめて中太で長い創作人生を歩みたいと思います。

関連記事