なにわ男子・高橋恭平の半グレ役で注目! 『マイホームヒーロー』間島恭一の憎めない魅力

 本作の「第一部」は、大切な子を持つ父親同士である鳥栖哲雄と麻取義辰の死闘で幕を閉じる。恭一の優秀さが描かれれば延人の無能さが際立つが、そんな無能な人間のために組織の多くの者たちが動き、最終的には父親までもが登場する。何の後ろ盾もなくひとりで闘ってきた恭一に肩入れしてしまうのは筆者だけではないだろう。バックグラウンドが丁寧に描かれることによって、彼は“ただの敵”に収まりきらないポジションを得ているのだ。

 それに冒頭に記しているように恭一は“強敵”とはいえ、哲雄とユニークな関わり方をする人物でもある。指定の期限までに延人を見つけ出さなければ、両者ともに命が危ない。互いに八方塞がり。自身を疑う恭一を、哲雄はもっとも危険視している。だから延人探しの協力を持ちかけることにより、哲雄は恭一と共闘関係を結ぶのだ。

 このふたりは親子ほど年齢が離れている。娘の零花は恭一と年が近く、恭一は幼い頃に父親を亡くしている。行動をともにするうち、互いに何かしらの情が芽生えてもおかしくはないだろう。恭一は絶対的に優位に立とうとするが、ときには哲雄に配慮した言動を取ることもある。スキのない人間だが、どこか憎めないところのある人物だ。やはり、哲雄の心配をしながらも彼にも肩入れしてしまう。

 善悪の価値観が揺らぐ体験を読者にもたらす本作において、“ただの敵”に収まらない恭一の立ち位置は哲雄と近いものがある。いや、近いがやはり対照的だ。哲雄の鏡像のような恭一の存在があることで、本作はより強く読者の善悪の価値観を揺さぶるものになっている。

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