シティハンター、聖闘士聖矢、スラダン、SAND LAND……相次ぐ映画化 80~90年代のジャンプ作品はなぜ今でも愛される?

  昨年から今年にかけて、1980~90年代に大ヒットした「週刊少年ジャンプ」黄金期の人気漫画が次々に映画化され、ファンが盛り上がっている。原作者の井上雄彦が濃密にかかわった『THE FIRST SLAM DUNK』や、『ドラゴンボール』の作者、鳥山明の短編漫画『SAND LAND』が映画化されて大きな話題になった。

   他にも『聖闘士星矢 The Beginning』『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』などなど、いずれも80~90年代の「ジャンプ」の名作が相次いで映画化されている。この時代の作品の映画化が相次ぐ背景には、何があるのだろうか。

まず、この頃に「ジャンプ」を読んでいた子どもたちが、現在30~40代になり、生活に余裕が生まれている。そのため、グッズを買ったりする資金も豊富にあり、コラボレーションなどのターゲットにしやすいという要因がある。

  また、この時代は「ジャンプ」が500~600万部という驚異的な発行部数を記録していた時代であり、そもそも作品の知名度が抜群に高い。当時を懐かしんで、消費行動に移る大人が多いため純粋にビジネスとして成功しやすいし、企業の社内でもかつてのファン同士で会話が弾みやすく、企画も作りやすい。

  その一方で、ある出版社の編集者がこう打ち明ける。

 「現在連載中の漫画で、こうした映画化しやすい原作が少ない。確かにヒット作品はたくさんあります。ただ、『ジャンプ』黄金期のような、男の子が共通して熱狂できるような純粋な少年漫画がないんですよ」

  そのため、なんと昔の漫画を読みだす子どもたちも出現しているのだとか。

 「現在の少年漫画はストーリーが作り込みすぎていて、大人でも理解できないものが少なくない。でも、80~90年代の漫画はキャラが立っているし、共感もしやすい。手に汗握るバトルもたくさんある。幸いにも電子書籍で昔の漫画が読めるため、今の子どもたちが昔の漫画を手に取ってハマるという現象が生まれています」

  また、編集者は「昔の漫画は完結しているのが大きなメリットですね。今の子どもたちは圧倒的に単行本派で、連載を読みませんから。親も完結している作品や、自分が読んでいた作品なら安心して与えられるという面もあります」と、話す。

  メリットもデメリットも様々な要素が挙げられるが、少なくとも、漫画の名作は世代を超えて楽しまれ、人々を魅了するということは間違いないだろう。

  そして、編集者のコメントにもあった通り、80~90年代の「ジャンプ」は少年漫画の王道をゆくバトルが楽しめるものが多い。そうしたバトルがセル画とは異なる、現代の映像技術でどのように表現されるのか。こうした技術面でも、見どころは多いといえよう。

 ©バード・スタジオ/集英社 ©SAND LAND製作委員会

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