実写ドラマ『ONE PIECE』なぜ炎上しなかった? 原作ファンも納得させた創意工夫

 Netflixにて、2023年8月31日に全世界同時配信が開始された実写ドラマ『ONE PIECE』。漫画の実写化には不安要素も多く、日本が世界に誇る人気漫画の実写化には、様々な心配の声も寄せられていた。

 しかし実際に配信が開始されると評価は上々で、Netflixでも84か国でデイリー1位を獲得している。実写『ONE PIECE』は、なぜ不可避と思われた炎上を回避できたのか。今回はその理由について、ワンピース研究家の神木健児氏に聞いた。

「全体的に、視聴した人の評価としては高評価が多いですよね。シーズン2を望む声も数多く挙がっています。日本の漫画のハリウッド実写化の歴史から考えると、実写『ONE PIECE』は大成功と言えるのではないでしょうか。僕自身の感覚としても、反響はものすごく感じています。これまでにも、歌舞伎であったり、アイススケートであったり、音楽であったり、『ONE PIECE』は様々なジャンルとコラボしています。その度、歌舞伎ファンが『ONE PIECE』を好きになるとか、違うジャンルからもファンを獲得してきました。今回の実写ドラマは、そうしたムーヴメントの最高風速を叩き出したのではないでしょうか。今回はキャストの情報やセットの外観、制作の裏側やその情熱を頻繁に告知していましたよね。そうした事前準備やメディア展開が、いざ配信された際の視聴者の拒否反応を少なくしていたのもあるかもしれません。絶対に成功させるという気持ちは、製作サイドの動きからも感じられました」

 漫画の実写化にあたって、ファンに寄り添う製作は必要不可欠だろう。

「炎上を回避した1番の理由は、なんといっても製作者たちの原作に対する愛を感じられたからだと思います。ファンとしては、やはり製作者との間に気持ちの温度差を感じ、イタズラに演出されるのが1番辛いと思うんです。その点、今回は製作陣が熱心な『ONE PIECE』ファンであることが、尾田先生のお墨付きで明かされていましたし、作中にも愛を感じる描写がいくつもありました。

 例えば原作から実写化するにあたって、カットされたところでいうと、ライオンのリッチーは出てきません。でも壁に、モージとリッチーの絵が描いてあるんです。シロップ村編でジャンゴは登場しませんが、手配書が貼られているシーンでは、しっかりとジャンゴの手配書がありました。そういう細かい仕掛けが数えられないくらいあり、何度見返しても楽しめるようになっています。

 我々ファンが描いてほしいと願っているシーンは、百も承知だと思います。実写化にはさまざまな制約があり、実現不可能な部分は多々あったかと思いますが、それでもファンの想いを裏切らないようにと創意工夫が凝らされている。その愛やこだわりが、視聴者に受け入れられた大きな理由なのではないでしょうか」

 原作者の尾田栄一郎が製作に携わっていたのも大きいと、神木氏は続ける。

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