“岡村ちゃん”の魅力の正体は? 読むラジオ『岡村靖幸のカモンエブリバディ』でわかった“謙虚さ”と“逆張り”と“自由”
岡村ちゃんは”変化”を恐れない
いきなり話が飛ぶが、昨今、ベテランアーティストの残念な言動を見聞きすることが増えた。その多くは、知識の吸収を怠り、変化を受け入れないことに起因していると思う。大きな成功を手にして、支持しているファンやスタッフに囲まれていると、自分の価値観を変化させる必要性を感じなくなるのだろう。岡村ちゃんのスタンスは真逆。“どんなにキャリアがあっても、年齢を重ねても、学び続けなくちゃいけない”“苦手なこと、恥ずかしいこともがんばってみよう”という姿勢は、本当に尊いし、言葉を選ばずに言えば、めちゃくちゃ可愛い。
この本のもう一つのポイントは、コロナ渦の影響。放送期間中にコロナの影響が大きくなり、リスナーからの質問・相談も、自粛期間中の過ごし方や人生観の変化といった内容が増えている。岡村ちゃんの回答も示唆とユーモアに富んでいるのだが、軸にあるのは“逆張り”と“グラデーション”という考え方だ。
「コロナ渦で変わってしまった世界も、そう悪くないんじゃない? って思うことはありますか?」という質問に、「コロナ渦で状況は悪いですよ、悪いんだけども「逆張り」だと、負けねぇという気持ちが大事です」「なめんな、と。そんな気持ちが必要ではないかなと思います。」と回答。また「岡村さんは、好きor嫌いという質問に対して、ハッキリ答えられますか」という質問に対して「いいんです、ハッキリ言えなくても。人間というものはね、グラデーションですから、こうじゃなきゃダメ、ああじゃなきゃダメ、こういう時は絶対こういうふうにするべき、こうじゃなくちゃいけない、っていう時もある。でも、どちらかしらって、神妙な面持ちになってしまうこともある。いいんです。」と答えている。
きつくて苦しいからこそ、“ふざけんな。負けねぇよ”と逆張りの気持ちを持ちつつ、“物事に絶対はない。決めつける必要もない”とグラデーションを行き来することの大切さを説く。一見矛盾しているようでもあるが、この懐の深さも岡村ちゃんの魅力だろう。(歴史家・河合敦との対談では、日本の歴史における伝染病のことについても言及。この本は“コロナ渦の記録”としての側面もありそうだ)
満島ひかりがゲストとして登場した回において、
(俳優の仕事は朝が早い、という話の流れで)
満島 朝、結構ゆったりしちゃいますよね。時間ちゃんとされてますか?
岡村 全然ちゃんとしてないです。
満島 よかったです。ちゃんとしてる岡村さん、嫌だったからよかった(笑)。
といった何気ないトークも楽しい『岡村靖幸のカモンエブリバディ』。真面目でキュート、ときどきおふざけ。岡村ちゃんの魅力をたっぷりと味わってほしいと思う。