芳根京子、女優としての軌跡と進化を見せたデビュー10周年写真集「作品を通して積み重ねてきた表現力を試したかった」

もともと料理関係の道に進むつもりだった

——本作は、表紙と裏表紙の両方から別のストーリーが読める写真集となっています。一方は“女優として生きる芳根さん”。もう一方は、“女優の道を選ばなかった芳根さん”が描かれている。面白い構成ですね。

芳根:ありがとうございます。“女優の道を選ばなかった芳根京子”というテーマを提案してくださったのも、石川さんなんです。しかも、ただ女優以外の職業に扮した私を撮るのではなく、“女優の道を選ばなかった芳根京子”と“女優として生きる芳根京子”が巡り会ったら? という、プラスアルファの見せ方を考えてくださって。

——実際、本編の真ん中で“女優として生きる芳根さん”と“女優の道を選ばなかった芳根さん”が対面しているシーンがありますね。

芳根京子 写真集 『京』
プロデュース:石川慶 撮影:片村文人
ワニブックス刊

芳根:石川さんがこだわって構成してくださった見開きです。対面した後、私はどうなってしまうんだろうって。またワクワクが広がりますよね。

——“女優の道を選ばなかった芳根さん”は、小料理屋さんで働く気の良さそうなお姉さんって感じですね。

芳根:女優になる前は、もともと料理関係の道に進むつもりだったんです。だから、もし女優になっていなかったら、小料理屋かどうかはさておき、本当に、今頃どこかの飲食店で働いていたと思います。

 撮影のシチュエーションとして、最初は「カフェ店員なんてどう?」って話だったんですけど、「いや、私はカフェじゃない。小料理屋のほうが合っていると思います」とお伝えしたら、石川さんも「たしかに、絶対そうだね!」って(笑)。撮影中もかなりしっくりきていましたし、結構、リアルなアナザーストーリーを描けた気がしています。

 それに、この“二人の芳根京子”は、別の人生を歩んでいるものの、同時に存在している設定なんです。住んでいる場所も、生活のリズムも違うけど、着ているパジャマは同じ。別の人生を歩んでいても、同じ芳根京子なんですね。とはいえ、正しい読み方があるわけでもないですし、隠された答えがあるわけでもない。逆に言えば、みなさんの解釈から発見できることもあると思うので、ぜひ自由に読み解いてもらいたいですね。

——異なる環境で、異なる仕事をしている“二人の芳根さん”の共通点があるとしたら?

芳根:撮影中は、どちらも“芯を持って生きている女性”としての表現を心掛けていました。私自身、あまり考えがブレるタイプではないので、仮に小料理屋さんで働いていたとしても、ちゃんと緊張感を持って仕事をしていただろうし、今、女優として現場に向かうのと変わらない気持ちで取り組んでいたんじゃないかなって。そこは、変わらない私らしさであってほしいですね。

タイトルは母親からの言葉が決め手に

芳根京子 写真集 『京』
プロデュース:石川慶 撮影:片村文人
ワニブックス刊

——表紙、裏表紙のカットも印象的です。どちらも、先ほど「緊張感を持って臨んだ」とおっしゃっていた、スタジオでのカットですよね。

芳根:はい。どちらのカットも、スタッフさんたちの投票で決めさせてもらったのですが、まさに満場一致の2枚でした。似たようなカットなのに、ヘアメイクが違うだけで、こんなにも印象が変わる。お芝居の楽しさって、こういう何気ないところからスイッチを入れて、自分とは違う人生を歩んでいくところにあると思うんです。表紙と裏表紙でも、石川さんが提案してくださった“二人の芳根京子”を見事に表現できて良かったです。

芳根京子 写真集 『京』
プロデュース:石川慶 撮影:片村文人
ワニブックス刊

——タイトルは「京」。背表紙を挟んで、表紙と裏表紙に「京」の文字がかかっているデザインが、また良いですね。

芳根:ありがとうございます。このタイトルは、本作を制作するにあたって、私のことをよく知る人たちにお願いしたアンケートから決めました。写真集のタイトルを募集したわけではないんですけど、回答者の一人である私の母親が「芳根京子を一文字で例えるなら?」という質問に「京」と答えていて。聞くと、名前の「京」であると同時に、漢字として左右対称なところが私らしい、という理由だったんですね。

 私ははっきりと覚えていないんですが、どうやら、いつかの現場でスタッフさんに「顔が左右対称だね」と言われて、喜んで帰ってきたことがあったらしく。「京」という字も左右対称じゃないですか。だから私らしいんですって。

 最初は、まさか「京」がタイトルになるとは思っていませんでした。でも、よくよく考えたら、写真集の構成も対(つい)になっていますし、左右対称の「京」が私らしくてぴったりなんじゃないかと思えてきて。しかも、表紙のデザインに当てはめたらすごくカッコいい。「お母さん、ナイス!」って感じです。今では、このタイトル以外考えられないですね。

——素敵なエピソードですね。ここまでお話を伺って、表現力然り、スタッフさんとの関係性然り、10年間の女優活動を経たことで完成した一冊であることが伝わってきました。

芳根:この10年間、決して楽しいことばかりではありませんでした。何なら、一人で辛さを抱え込む時間のほうが多かったかもしれません。でも、一生懸命お芝居に向き合っていると、「今のシーン、すごく良かったな」と達成感が得られたり、成長を感じられたりする場面が多々あって、その些細な喜びや感動が、それまで抱えていた辛さを簡単に飛び越えてくるんですよね。何度もその体験を繰り返してきたからこそ、どんなに辛いことがあっても、続けられるんです。それらが繋がって本作が完成したと思うと、何だか感慨深いですね。

——11年目のご活躍も期待しております! 今後女優として達成したいこと、挑戦したいことはありますか?

芳根:ずっとお芝居を続けていたい。それに尽きますね。正直、デビューした10代の頃に比べると、体力も落ちているのですが、やっぱり役を演じることが楽しくて仕方ないですから。とはいえ自分を大事にしないと元も子もないので、心身のケアはちゃんとしつつ、作品ごとに120%の自分を出し切りたい。そうやって、これからも絶えず女優という職業に挑戦していきたいです。

【クレジット】
・スタイリスト:杉本学子
・ヘアメイク:イワタユイナ

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