フリーアナウンサー・堀井美香が語る、聴くことの重要性「“聴きポジ”というスタンスがコミュニケーションを円滑にしてくれる」

 昨年3月にTBSから独立し、フリーアナウンサーとして活躍の幅を広げる堀井美香。話すことのプロである彼女が“聴く技術”について語った『聴きポジのススメ 会話のプロが教える聴く技術』(徳間書店)を発売。自分の居場所やコミュニケーションについて悩んでいる人にそっと寄り添うような一冊には、聴くことの重要性から、すぐに実践できるノウハウについても書かれている。数多のインタビューを行ってきた堀井美香に、相手との会話術、そして“聴きポジ”でいることの大切さを伺った。

“聴きポジ”という認識が気持ちを楽にする


――“話すこと”のプロであるアナウンサーの堀井さんが、“聴くこと”について書いたきっかけを教えてください。

堀井:アナウンサーとしての研修の中では、インタビューや聴くことの特訓も受けてきました。その中で、自分自身は聴くポジション、相手のお話を聴く側の人間であることに気がついていたんです。でも、聴くことの重要性や、自分に聴く力があることは意識していませんでした。

 そんな時に出版社の方から「堀井さんの聴く力に関して興味があります」とお声がけをいただいたんです。私という人間が、今まで聴く仕事をたくさんしてきたこと、周りとの会話をどのように進めているかということに関心があると言われたので、改めて聴くことについて考えてみました。

担当編集:堀井さんの世間のイメージが、猛獣使いみたいだと思ったんです(笑)。各界著名人の話好きな人たちのお話をきれいにまとめたり、華麗に方向転換しながら相手がどんどん話したくなるような聴き方をされているのが印象的でした。その聴き方について言語化していただきたくて、オファーしました。

堀井:自分では自然にやっていることだったので、聴き方に関して意識していたわけではないんです。でも、確かに「堀井さんだと相手がよくしゃべるよね」みたいなことは昔からよく言われていたので、ロジックを立てて聴き方についての考えを整理するのは良い機会だと思いました。

――アナウンサーのキャリアの中で、どのように聴くスキルを身につけてこられたのでしょうか。

堀井:思い返すと、幼い頃から話すよりも聴くポジションにいることが心地よかったですね。仕事でも聴く側のポジションに入る仕事がすごく多くて。自分がメインでパーソナリティーになるより、ラジオアシスタントやインタビュアー、トークショーの司会をすることはよくあったので、徐々にスキルを身につけてきたと思います。


――今回のご著書は“聴きポジ”がキーワードになっています。聴く側に回るということの重要性についてはどうお考えですか?

堀井:例えば、大人数がいる場所で誰かと会話するのが苦手で、コミュニケーションを取れないときに、その居場所として「ああ、私は聴きポジの人間なんだ」と自分で認識することによってその場にいやすくなる、会話に参加しやすくなると思います。自分から話題を提供して、話さなければ、アピールしなければと思うと辛くなってしまうけれども、聴く側の人間だと認識することで、気持ちが楽になる。ストレスなくその場にいることができる。

 さらにいえば、そのコミュニティは、聴いている人がいることで成り立っているのかもしれません。9割話をしているより、1割だけ話して9割聴いている人の方が、実はその場の雰囲気を良くしているんではないかな? とも思っています。

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