『チェンソーマン』デンジのポジティヴさは異様……印象的すぎる言動を振り返る
「ずっと自分の正体が自然な感じでバレる方法考えてる・・・」
そんなデンジの病的なまでのポジティヴシンキングはバトルの最中でも発揮される。とりわけ印象深いのは第二部「学園編」の第13巻109話『簡単なイジメのなくしかた』。思考を読み取る能力を持つ正義の悪魔とチェンソーマンに変身したデンジの戦闘中、デンジの思考を読み取った正義の悪魔のモノローグだ。戦闘の最中でも戦いのことを考えず、自分がモテるためにはどうしたら良いのかだけを考えているデンジは欲望に忠実だが、それによって敵や死への恐怖を超越している。
デンジというキャラクターは単純な荒唐無稽なバカキャラというわけではない。作中で地頭の良さを感じさせる瞬間も多々描かれている。彼の特異性はその感情の切り替えの良さと振り幅にある。他の漫画のキャラクターであれば感情の揺らぎの中で徐々に前向きになったり、消極的になったりするものだが、デンジはたった一コマで感情が行き来する。そしてそのスピード感のエンジンとなっているのはデンジの欲望だ。欲望が生み出すデンジの感情変化のスピードが彼の特異性をより強調すると共に『チェンソーマン』という作品そのもののスピード感ともマッチし、何気ない日常シーンも飽きることなく読み進めることが出来るのだ。ぜひデンジの感情の起伏に注目しつつ『チェンソーマン』を読んでみてほしい。