『鬼滅の刃』“彼ら”はその後どんな人生を送ったのか 柱から屋敷の少女たちまで、物語の先が気になるキャラクターたち

揺れ動く大正、そして昭和

 『鬼滅の刃』の時代設定が大正時代だ。おそらくそれには理由がある。

 明治や昭和は非常に長く、激動の時代で社会も大きく変化した。一方、大正時代は関東大震災が起きるまでは現代に近い、国民が平和を感じていた時代だったという。(※1)

 どの年に最終回を迎えたのか知るヒントをくれるのは産屋敷輝利哉だ。最終回が連載の終わった2020年だと仮定すると、その年に産屋敷輝利哉は日本最高齢だと紹介されている。

 現実では2020年、日本最高齢は117歳だったので、そこから逆算すると輝利哉が生まれたのは1903年、『鬼滅の刃』で無惨が死んだときは8歳だったので、最終決戦は1911年だったように思われる。

 しかし大正が始まるのは1912年からなので、2020年に輝利哉が117歳より年齢がいくつか上であれば公式設定の大正時代と重なる。つまり『鬼滅の刃』は大正初期の物語なのだ。

 大正初期は、1914年から1917年まで第一次世界大戦も起きているが、この大戦は第二次世界大戦と違って日本が戦場になったわけではないので、国民に大きな被害をもたらしていないそうだ。(※1)

 しかし1923年の関東大震災は、鬼と戦った後の彼らの人生に大きな影響を及ぼしただろう。死んだ人物もいるかもしれない。

 関東大震災の約3年後、大正は終わる。正確には1926年12月25日だ。そして昭和になるとまず日中戦争が起きる。その後、第二次世界大戦で日本が惨劇の場となるのは知ってのとおりだろう。

 『鬼滅の刃』の登場人物たちがいつまで生きていたのかはさだかではないが、歴史の渦にのまれたのは間違いない。大正時代初期は、日本で起きた出来事に左右されることなく鬼と鬼殺隊の隊員たちの戦いを描ける、最適な時代だったのだ。

 あざが出現した21歳の実弥、義勇、15歳の炭治郎の寿命が25歳までだとすれば、第二次世界大戦が始まる前に3人とも死亡したと断定できる。なおかつ実弥と義勇は関東大震災をも経験していない可能性が高い。

 残る善逸、伊之助などの人生は、決して並大抵のものではなかったと思うが、子孫を残し、死者は転生して現代に至る。

 歴史を振り返り、それに登場人物たちがどんな影響を受けたのか考えながら『鬼滅の刃』のその後を想像してみると、また新たな見方ができるかもしれない。

■参考文献
※1 『100年前から見た21世紀の日本: 大正人からのメッセージ』(大倉幸宏/新評論)

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