『正反対な君と僕』キラキラ青春ラブストーリーの背景にある、スクールカーストの難しさ

 誰もが何者でもないモラトリアムである学生時代において、自己認識や他者認識が無意識のうちに混沌とすることは誰もが通る道だ。我々は10代を学校という社会の中で過ごし、コミュニケーションを通して喜びや苦しみや悲しみを重ねながら、大人への第一歩を踏み出すための準備をするのだろう。みゆや谷、平といったキャラクターたちが学校特有のヒエラルキーや他者評価に悩みつつ、素直に他者と接続して青春時代を駆け抜けていこうとする様を通して、私のコミュニケーションに悩んだ学生時代も少しだけ救われた気がした。

 『正反対な君と僕』の作者である阿賀沢紅茶は単行本化が決定した前作『氷の城壁』でも学園モノを描いている。それも『正反対な君と僕』同様にコミュニケーションに悩むティーンエイジャーたちを描くストーリーだ。阿賀沢の描く10代のキャラクターたちが人との関わり合いに悩み、苦しみ、それでも日々を全うし一生に一度の青春時代を駆け抜けていくストーリーは、今まさに青春時代真っ只中の10代にはもちろん、青春時代を過ごしてきたすべての読者が胸を掴まれることだろう。

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