誰が欠けても「結束バンド」ではないーー乗り遅れたあなたに送る『ぼっち・ざ・ろっく!』メインキャラ解説

 女子高校生によるバンド活動の様子を描いた、はまじあきの漫画『ぼっち・ざ・ろっく!』。3月の上旬には、シリーズ累計発行部数が200万部を突破するなど、アニメ版の放送終了から4ヵ月が経とうとする今もなお、その人気は続いている。

 本作の魅力はさまざまだが、何よりインパクトの強い主人公をはじめ、キャラクターが個性豊かに輝いている。今回は、作中で「結束バンド」として活動する4人に焦点を当て、それぞれのメンバーがどのような関係性で描かれているのか、あらためて見ていきたい。

ギターヒーロー・後藤ひとり

 『ぼっち・ざ・ろっく!』の主人公は、通称“ぼっちちゃん”こと、後藤ひとり。自分もバンドを組めば輝けるんじゃないかと憧れを抱き、中学時代は毎日6時間も練習ギターを練習するほど。その甲斐あってギターの腕前はなかなかのものだが、ひとりで練習していたために誰かとセッションをすると本領が発揮できないという弱点も持ち合わせている。

 ぼっちちゃんは「ギターヒーロー」名義で自身の演奏動画もアップしている。作中で「再生数が結構あった」と明言されていることから、それなりに知名度を持つ投稿者として知られているようだ。一方、現実では極度の人見知り。彼女が作中で結成するバンドに入るまでの一ヶ月は友達もおらず、ひきこもり一歩手前であることが描かれている。

 作品の随所に散りばめられた孤独なエピソードや不器用な様子もさることながら、欲に負けたり自堕落だったりと、どこか人間臭さを感じられるのも彼女のポイントだろう。青春群像劇の主人公のイメージ像とはかけ離れた、いわゆる“陰キャ”的な描写が多いのが特徴だ。

ボーカル兼ギター・喜多郁代

 ぼっちちゃんとは対照的に描かれるキャラクターとして、ボーカル兼ギター・喜多郁代の存在も欠かせない。“陽キャ”と呼ばれるほど社交的な彼女は、作中に登場するSNS「イソスタグラム」で、15,000にも及ぶフォロワーを抱えるインフルエンサー。ぼっちちゃんが「ギターヒーロー」の名義でネット上で活動しているのとは、また違った装いでネットで注目を集めているのである。

 運動神経抜群で勉強もできる喜多だが、ギターに関しては全くの素人。反対にぼっちちゃん自身は勉強も運動もできないが、ギターだけはプロでも通用するほどスキルを持っている。ぼっちちゃんが喜多にギターを教えたり、逆に喜多が勉強を教えたりなど、似ていないようで、実は共通点もあるふたりは補完し合うような関係で描かれていることが多い。

ベース・山田リョウ

 クールで自由奔放、ポテンシャルは高いがいい加減。そんな掴みどころのない変人キャラクターが、ぼっちちゃん達のひとつ上の先輩にあたるベーシストの山田リョウ。お金に対してズボラな部分や、後述する伊地知虹夏に甘え過ぎてしまうマイペースな性格ではあるのだが、バンドメンバーが落ち込んでいたら鼓舞してあげる優しい一面もある。

 ぼっちちゃんが作詞に悩んでいた際は、自身の過去の経験から「他人のことを考えてつまんない歌詞書かないで 自分の好きなように書いてよ」と激励していたことからも、時折本質的な部分を突いてくる姿は、いい意味でも悪い意味でも後輩を導く良き先輩ポジションであることが窺える。

ドラマー・伊地知虹夏

 そして、最後に紹介するのはバンドのリーダーでもある伊地知虹夏。先述の3人がある意味で尖っているため、作品内でも随一の良識人として見られることが多い。明るく面倒見がよい性格で、バンドに対してネガティブな感情を持っていたぼっちちゃんとリョウを「結束バンド」に誘い、自己嫌悪する喜多をバンドに迎え入れたりとその包容力を遺憾なく発揮したことがある。そのおかげか、一癖も二癖もある3人から信頼を置かれており、バラバラな個性をまとめあげられるのは彼女だからこそと言っても過言ではない。

 彼女は、とある理由からバンドとして成功することで、姉のライブハウスを有名にしたいという夢がある。虹夏以外の3人が作詞や作曲、共にステージでパフォーマンスしてくれるおかげでその夢に一歩ずつ近づきつつあるのだから、彼女にとってもメンバーは必要不可欠なのだ。

 あらためて振り返ってみると、メンバー4人が見事に補い合う関係だ。つまり、それぞれがまさに“結束バンド”のように互いに固く結びついていることが見えてくる。誰かひとり欠けても「結束バンド」は成り立たないのではないだろうか。彼女たちがこの先どんな未来を奏でるのか、今から楽しみである。

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