元日向坂46・宮田愛萌 大好きな「万葉集」をテーマにした初小説集「和歌は自由、自分なりの解釈を大事にしました」
今年1月末に日向坂46を卒業した宮田愛萌が2月に初の小説集『きらきらし』(新潮社)を発売した。高校生の頃に出合い、大学で専攻していた万葉集をテーマに執筆された本作には、5種の和歌からインスピレーションを受けた短編小説全5編を収録。発売前に重版がかかるなど、話題の一冊となっている。
小説のほか、万葉集の舞台となっている奈良で撮影された撮り下ろしカットにも見応えがある。小説に登場する主人公と重なる彼女自身の姿に、物語の内容も相まって、きっと読者の多くがドキドキすることだろう。
本インタビューでは、5編の執筆を終えた今の心境と万葉集への思い、また彼女の読書習慣についても改めて聞いてみた。本作が万葉集への、また読書への新たな入り口になると嬉しい。(とり)
執筆でいちばん大変だったのは……
宮田 「無事に完成して良かったぁ」って気持ちが大きいです。自分で書いた小説が本になるのは初めてですし、ただただ嬉しい思いでいっぱいです。でも、何となく「私なら書けるかな」って気持ちもありました。自信家みたいで恥ずかしいですけど(笑)。
——さすがです。本作に収録されている5つの短編小説は、いずれも万葉集の和歌がモチーフになっているんですよね。
宮田 そうなんです。大学時代に専攻するほど大好きだった万葉集からイメージを膨らませられたら面白いだろうなぁと。好きな和歌を5首、選ばせていただきました。本作をきっかけに、万葉集に興味を持ってくださる方が増えたらな、なんて邪(よこしま)な気持ちもありつつ。うふふっ。
——実際、原稿はどのような環境で書かれていたんですか?
宮田 基本的には、カフェで書いていました。お昼から夕方ごろまで書いて、夕飯の時間には家に帰って……くらいのペースで進めていました。締め切りギリギリになると、そのまま夜まで書いていた日もあります。
——ご自宅では書かれなかったんですか?
宮田 それが、家の中だとすこぶる効率が悪くてですね。……実は、家に椅子がなかったんですよ。あっ、今はありますよ? でも、執筆期間中は、椅子の代わりになるものがベッドしかなくて。ベッドに座って書いていたら、絶対に寝ちゃうじゃないですか(笑) だから、家ではほとんど書かなかったんです。
——なるほど(笑)。読ませていただくと、大学で古典を学んでいたり、図書館に通い詰めるほど本が大好きだったり、主人公の女の子と宮田さんが重なって、ちょっとドキドキしました。宮田さんのプライベートを覗き見しているような感覚になったというか。
宮田 あはは。私も、大体「この子、私っぽいな」って思いながら書いていました。でも、恥ずかしながら、小説に描かれている内容は、ほとんど私の妄想です(笑)。和歌の解釈から、「もし現代だったら、こういうシチュエーションが当てはまるのかな」って、ひたすら妄想を膨らませてプロットを立てていきました。
とはいえ、大学の授業風景など、実体験をもとに書いている部分もあります。なるべくリアルなシチュエーションを描くために、実際に私が通っていた國學院大學のキャンパスの見学をさせてもらったんです。通い慣れたはずのキャンパスも、取材としてゆっくり見て回ると、意外と知らないことが多くて新鮮でした。「講義室の座席の前後の距離感って、こんな感じだったんだ」みたいな。在学中は授業に必死だったからなぁ(笑)。
——過去にも短編小説を書かれていましたが、5編もまとめて執筆されるのは初めてだったかと思います。特に大変だったことは?
宮田 プロット自体はわりとすぐに考えられたんですけど、登場人物の名前を1編ごとに考えるのが難しかったです。なるべく5編で似通った名前の人が出てこないように、かつ読みやすい名前にしようと考えると、意外と出てこなくて。
——名前ですか。確かに、盲点かもしれません。
宮田 気をつけたところでいうと、イニシャルが被らないよう名づけていきました。ただ、最初に収録されている「ハピネス」に出てくるカレンと圭だけは、何故かものスゴくちゃんと考えた記憶があります。名前の意味はもちろん、誰がつけた名前なのか、とか。最後の方に書いたお話だったから、本当に名前のネタが尽きちゃったんでしょうね(笑)。ほかの作家さんは、どんなふうにして登場人物の名前を決めていらっしゃるんだろう……。改めてリスペクトが高まりました。