【漫画】人生に絶望する“ネコ”は、それでも今日を生きるーーSNS漫画『あたしネコ』は心が痛み、少し軽くなる
自身の経験から生まれた作品
――『あたしネコ』制作の経緯など教えてください。
ちりぬるを:あまり詳しくはお話しできませんが、よく希死念慮を抱えていました。本作は「生きていたら他者に迷惑をかけてしまう」「死んだほうが両親のためになる」と強く思い込んだ時期を基に制作しました。というのも、『あたしネコ』を思い付く前に母と2人だけで腰を据えて話す機会がありました。その時、小学校のころに性被害に遭ったことを始めて告白しました。死ぬまで家族には黙っているつもりでしたが、「身近な人間に言えない」という状態で自死を避けることは自分の中で大変困難だったので。
――お母さんの反応はどうでしたか?
ちりぬるを:幸いにも母は寄り添ってくれて、そこから少しずつ「死ななくて良いんだ」と思えるようになりました。ただ、鬱状態がひどい時期でもありましたので、仕事と家事で手一杯でした。当然創作活動に割ける体力は残っておらず、気付いたら数ヶ月経っていました。
ただ、「今まで精神的にはずっと死んでいたのに、まだ死ぬのか?」みたいな気持ちが漸く湧き、「とりあえず拙くても1本描き上げよう」と思い、細かい設定や作画のクオリティは無視して、ただ完成させることだけを意識して描き上げました。
説明するとページ数が増えてしまう
――ネコはどのように作り上げましたか。そもそも、なぜ猫のようなビジュアルにしたのですか?
ちりぬるを:動物やロボットといった人間ではないものが人間くさい素振りをしている様子が昔から好きでした。中でも自分が楽しく描けるものが獣人です。また、手癖もあってかああいうビジュアルになりました。
――見た目が猫なこと、過去や家族関係があまり描かれていないことなど、説明を最小限に抑えた内容でした。
ちりぬるを:狙いはなく、ただただ説明不足なだけです。商業的に考えたら読者を置いていくことはあってはならないのですが、これは創作活動へのリハビリを兼ねており、とにかく“完成させること”が大事でした。正直「猫である必要性や家族関係をちゃんと説明してたらページが増えて積むなあ…。読み手、御免!」と思いながら描いていました。
――ラストの「じいちゃんに会いたくないから死なない」という猫の気持ちがとても清々しく、「頑張らなくても生きていればそれでいい」というメッセージを感じました。
ちりぬるを:こういう人間は自責の念にかられがちですが、「別に思っているほど死ななくていい」です。なので、ネコが自身の中でどうにか落としどころを見付けて、“自分自身で”生きるほうに向かう選択をしてもらいました。
――今後はどのように漫画制作をしていく予定ですか?
ちりぬるを:商業で漫画を描きたいです。担当してくださっている人が人間的にも編集者としても最高なので、「その人のためにも掲載までこぎつければ良いな」と思っています。また、仕事のご依頼もお待ちしております。宇宙くらい心の広い方いらっしゃいましたら、どうぞよろしくお願いします。