【漫画】BUMP OF CHICKENの名曲にインスパイアされた『車輪の唄』が完成 昭和中期の少年少女が紡ぐ切ない物語に
取材後の反響
――まず、2022年6月では『車輪の唄』の前半部分のみの掲載でした。今回、フルで投稿した経緯は?
天野:本作は昨年、大学で制作した卒業制作作品なのですが、卒業展示からちょうど1年経ったので、「タイミング的にいいか」と思って公開しました。
――2022年7月5日、天野さんに本作に関する取材をさせていただきました。記事掲載の反響などありましたか?
天野:昨年はフルではなく前半部分のみの掲載だったにもかかわらず、取り上げていただいて嬉しかったです。また、その記事自体もかなり拡散されて、とても驚きました。初めて1人で作った同人誌だったので感慨深かったです。知人からも「記事回ってきたわ!」と報告をもらい、嬉しいやら恥ずかしいやらでした(笑)。
ーーBUMP OF CHICKENの楽曲「車輪の唄」から着想を得たとのことですが、楽曲は別れの曲であるに対して、本編では未来で再会を果たすシーンで終わります。このラストはどのように決められたのですか?
天野:ラストは最初から決めていました。離れ離れになった幼馴染2人が未来で再会する…というのが初期のプロットで、時代設定が昭和中期なのも、変化の激しい高度経済成長の時代に設定した方がラストが印象に残ると思ったのが理由のひとつにあります。
――“残された僕”である晃彦と、“何万歩より距離のある一歩”を踏み出した梅子が別れてから出会うまでの10年間のストーリーも読みたくなりました。
天野:「彼らの努力の過程は描かなくても伝わる」と思ったため、そこは描きませんでした。また、強い感情や心の変化のないようなシーンは省いてしまうことが多いので。
――2人の関係性は友情ともとれる、恋愛ともとれる絶妙なバランスで描かれていました。
天野:結果的にそうなりました。最初は切ない恋愛もので進めるつもりだったのですが、構成とキャラクターを練ってる間に梅子のメンタルは鋼になり、晃彦は自分のことでいっぱいいっぱいになったので、恋愛感情の入る余地がなくなりました。また、晃彦が性格の違いと劣等感と偏見から梅子を嫌っていたため、友人関係にもなりませんでした。多分2人は学校では会話をしていないです。
――本当に何とも言えない距離感ですね。
天野:はい。晃彦がちゃんと梅子に向き合えたのは自転車が壊れた後、梅子の本音が聞けたあの時が初めてです。2人の関係は始まった瞬間に離れ離れになってしまった感じです。
手は顔より感情を表す
――梅子が雑草を掴んで前に進むシーンは印象的でした。
天野: そのシーンは印象的にしたいとは思っていましたが、手の表現のこだわりは特に意識しておりませんでした。「怒り」や「何かを決意するような力強いシーン」はとくに、顔を見せるよりも手の方が効果的に演出ができると考え、好んで演出に使っているのだと思います。この質問をいただいて初めて自分の癖を自覚できました。ありがとうございます。
――梅子を見送る際に握りこぶしを作った後、晃彦が自身の夢を語るシーンの握りこぶしも印象的で、手に関する描写が頭に強く残っています。
天野:そのシーンはあまり何かを意識して描いたわけではありません。ただ、手は感情が隠せない部位ですので、「怒りや何かを決意するような力強いシーンは顔を見せるより、ずっと効果的に演出ができる」と考えながら手は描いています。そのことが印象に強く残った要因かもしれません。
――最後に今後の目標などあれば教えてください。
天野:週刊連載してみたいです。また、Twitterで更新している『ウィッチ&シーフ』という漫画、「サンデーうぇぶり」に掲載している過去の短期連載作品や読切作品がありますので、読んでもらえるととても嬉しいです!