古今東西の奇怪で珍妙な呪法をこの1冊に 『愛法と呪法の博物誌』がおもしろい

 古今東西にわたる奇怪で珍妙な呪法を紹介した1冊『愛法と呪法の博物誌』が1月31日に刊行した。

  取り上げている呪法は、どれもが「ドロドロ」としたものばかりで、読む人は目を背けたくなるかもしれない。以下のようにまとまっている。

⇒第一章「浮気封じに恋占い丑の刻参りなどの色恋の関する愛憎の呪法」
⇒第二章「脳髄に糞尿、バイアグラなどの猟奇的薬物とその生成呪法」
⇒第三章「悪魔、魔女、巫女に死霊などの黒魔術」
⇒第四章「縁起かつぎや摩訶不思議な民間呪文など」
⇒第五章「イカサマ呪術やエセ祈祷」
⇒第六章「“結び”と呪術の関係」

 しかし、著者はこのドロドロこそが人間が人間である以上は避けて通れない、人間の本質的・根源的なものであるといい、共生すべきものであると述べている。

「呪法という、逸脱し、暴走した想像力の現場を通して、われわれはむきだしになった、非合理そのものの人間存在と向き合うことになる。
人間は、なんと哀れなものだろうと思う方もいるだろうし、だから愛しいという方も、だから度し難がたいと思う方もいるだろう。
受け取り方は、もちろん各人の自由だ。
私はただ、この人間社会で実際におこなわれてきたドロドロの現実を示そうと思うのである。」

 今回、図録含めて大幅に修正するにあたり、著者は原著で示したこの状況は、現代になり、より一層混沌としたものに向かっていると指摘する。

「人間そのものが抱える“ドロドロの現実”は昔と同じでも、人間社会を成り立たせ、動かしていく仕組そのものが、根本から変わってきている。古人と同じようにモノや人や自然とじかに関わりあいながら生きることができない新たな世の中で、人間の心がどうなっていくのか、先行きは見えない……。」

 紹介された数多の呪法が読者にどのように作用するのか、本書の答えはそれぞれの心の中にあるだろう。

 【商品概要】
●タイトル:愛法と呪法の博物誌
●著者:藤巻一保
●定価:4,950円(税込)
●体裁:四六判・上製・430頁
●ISBN:978-4-910924-02-1
●発売日:2023年1月31日
●発行元:株式会社説話社
●https://mycale.jp/itemDetail.php?iKey=367
※本書は『呪いの博物誌』(2005年、Gakken)に大幅な加筆修正を加えて改題したものです。

【著者プロフィール】
藤巻一保(ふじまき・かずほ)
1952年北海道生まれ。作家・宗教研究家。中央大学文学部卒。
 雑誌・書籍編集者を経たのち、宗教を軸とした歴史・思想・文化に関する著述活動を行う。東洋の神秘思想、近代新宗教におけるカルト的教義と運動に関する著作を数多く手がけている。
 主な著書に『密教仏神印明・象徴大全』(太玄社)、『アマテラス:真の原像を探る』、『役小角読本』(以上、原書房)、『安倍晴明『簠簋内伝』現代語訳総解説』、『秘教Ⅰ―日本宗教の深層に蠢くオカルティズムの源流』、『秘教Ⅱ―現代語訳で読む秘儀・呪法の根本史料』、『秘説 陰陽道』(以上、戎光祥出版)、『天皇の秘教』「エソテリカ」シリーズ(以上、学研プラス)などがある。

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