ケモミミ少女×師匠の創作漫画、プロが添削するとどう変化? 元少年誌連載作家が指摘した“読者の視点”の大切さ
各種アプリやウェブサービスの普及により“掲載”の場が増え、多くの作家が世の中に漫画を届けることができるようになった昨今。当然「人気作家」への道は険しいが、SNSでオリジナルの漫画を発表してバズを起こし、商業連載につなげたヒット作も続々と登場している。同時に、プロの目線を通さない「独学」ゆえの悩みを抱えたクリエイターが少なくない状況だ。
そんななか、YouTubeチャンネルで視聴者から創作漫画を募って「添削」を行い、絶大な人気を博しているのが、元週刊少年漫画誌の連載作家・ペガサスハイド氏だ。解説のわかりやすさとともに、相談者の個性を生かすためのアドバイスが心地よく、自分では絵を描かない人も楽しく視聴できるのが特徴だ。動画でイラストや漫画の添削を行うクリエイターは少なくないが、そのなかでも視聴者からの信頼が厚く、チャンネル登録者数は15万人を超える。
最新の添削動画は、「【漫画添削65】読者の立場に立てているかでうまさが決まる~プロ漫画家が教えます~」と題されたもの。読者のことをまったく考えないクリエイターは少ないと思うが、本当にその立場に立てているのか。プロの経験が光る内容だ。
今回取り上げられたのは、「どうやったら人に見てもらえるような漫画が描けるのか」と悩んでいるという、匿名希望さんの作品。“師匠”の部屋に本を届けた獣人系の少女が、部屋で喫煙中の師匠を注意する……というシーンを描いた1ページだ。ハイド氏は「絵が可愛らしいですよね。頭に動物の耳が生えていたり、衣装が変わっているので、ファンタジックなキャラクターだということがわかります」「漫画の初心者さんは吹き出しを小さく描く人が多いのですが、匿名希望さんはゆとりのある多きさで描いていて、すっきりと読みやすい漫画になっていると思います」と、優れている点を評価。その上で、いつものように自らネームを引き直し、改善点を解説していく。
ハイド氏がまず気になったのは、今回の動画のテーマにもなっている「読者の立場に立てていない」ということだ。指摘されてみると、「トントン」というノックの音や、「ビクッ」という擬音が黒い背景に沈んでしまい、極めて読みづらい。手描き原稿であれば、文字を白く縁取るなど実は高い技術が必要だが、デジタルの作画であれば瞬時に直せる。それをやっていない、というのがハイド氏には疑問だという。
また、背景の描き込みが少なく、シチュエーションが絵として伝わりづらいのも、「読者目線」に立てていない部分だという指摘も。漫画として表現できるか、という画力の問題ではなく、自分のイメージを読者に伝えようとする気持ちがあるかどうかーーハイド氏は、「漫画には描く人の性格や人間性がすべて出ると思ったほうがいい」と語った。
個別の技術はさまざまな形で学べても、プロフェッショナルの意識の持ち方が学べるシーンは多くない。ハイド氏は今回、添削希望メールの文面も含めてアドバイスを送っており、絵を描かない視聴者にとっても学びの多い動画になっていた。相手の立場になって物事を考える……という、多くのことに通じる本質的なポイントをあらためて学びたい人は、ぜひ動画をチェックしてみよう。
■参考動画:https://www.youtube.com/watch?v=BZDOSj2Kxo8