『ぼっち・ざ・ろっく!』作者・はまじあきインタビュー「 ぼっちちゃんの性格は、私自身の投影です(笑)」
今期のアニメーション界の話題を席巻する作品になった、はまじあきの4コマ漫画『ぼっち・ざ・ろっく!』。
「陰キャならロックをやれ!」というキャッチコピーはインパクト抜群であった。陰キャ女子の後藤ひとり(ぼっちちゃん)のネガティブっぷりが炸裂するギャグ漫画と思いきや、ぼっちちゃんの成長があり、バンドメンバーとの友情もあり……と、実は王道を行く成長物語であり、音楽漫画としても読みごたえ抜群の名作なのだ。
そんな注目作を生み出した、漫画家はまじあきに直撃インタビュー。12月24日にはアニメーションが最終回を迎えたばかりだが、気になる漫画の今後についてもお話を伺った。
ぼっちちゃんは作者自身の投影!?
――『ぼっち・ざ・ろっく!』は今期のアニメで最大級の話題作となりました。Twitterを見るとアニメの放送当日はハッシュタグをつけたツイートが大盛り上がりで、トレンド入りの常連でした。
はまじ:自分の想像以上の反響に、凄く驚いています。主人公の後藤ひとり(ぼっちちゃん)は、キャラからギャグまで負の部分が多いですし(笑)、まさかこれほどの支持をいただけるとは思ってもいませんでした。今回の盛り上がりを見ていると、自分の作品じゃないような感じですね。
――ぼっちちゃんは、歴代きらら作品有数の陰キャ女子です。共感を得ているのはなぜだと考えていますか。
はまじ:ぼっちちゃんはおそらく、SNS社会の今だからこそ受け入れられたキャラクターという感じがします。SNSでは特技を披露してヒーローになれるけれど、現実社会とのギャップに悩んでいる人もいると思うんです。私自身がそういった感情を持っていて、思いをぼっちちゃんに代弁させたら、共感してくださった方が多かったということではないでしょうか。
――ということは、ぼっちちゃんの性格は、はまじ先生ご自身を投影している部分もあるのでしょうか。
はまじ:私は「結束バンド」のメンバーの中では、性格がぼっちちゃんに一番似ているなと思います。似ている点では凄い調子乗りなところや、少しでも褒められたりしたらすぐに、「自分はもしかして上にいけるんちゃうか!?」と思ってしまうところとか(笑)、あと、妄想力が無限大なところなどでしょうか。私はぼっちちゃんと、山田と、廣井をミックスしたような性格だと思っていて、喜多ちゃん以外の要素は全部自分に入っていると感じます。
――それにしても、1巻の序盤のぼっちちゃんのネガティブ思考は強烈です(笑)。
はまじ:私自身が、何を見ても否定から入るタイプだからなのかもしれません(笑)。ぼっちちゃんのセリフは、何も考えなくても出てきますから。
キャラクターデザインの手法
――私がはまじ先生の作品を見て感じるのは、巧みなキャラクターデザインです。シンプルな線でキャラの描き分けがなされていますし、髪の毛の色分けもいいですよね。
はまじ:現在のような盛り上がりは想定していなかったんですが、キャラデザが複雑すぎるとファンアートなども描いてもらえないと思ったので、シンプルな造形にしていますね。髪がピンクになったのは、『こみっくがーるず』のかおすちゃんの影響かも(笑)。それに、元々きらら作品のキャラはピンク髪の主人公が多いですからね。
――ジャージを着て楽器を弾く姿も、ぼっちちゃんの陰キャな性格が見事に表現されています。
はまじ:ファッションセンスのないキャラを作りたいと思っていたので、それならずっと芋ジャージばかり着ているキャラだろうと。最初の頃に編集の瀬古口さんに送ったキャラ表でも着せていたので、イメージとして固まっていましたね。
――音楽漫画では、楽器もキャラクターのイメージを投影する存在です。ぼっちちゃんの愛用するギターがレスポールカスタムなのはなぜでしょうか。
はまじ:最初の頃、私は楽器にぜんぜん詳しくなくて、ベースやギターの見分けがつかないほどだったんです。キャラデザが先に決まったので、ピンクの髪とジャージに映える色は黒かなと考えました。そこで「黒」「ギター」などの単語で検索したら、レスポールカスタムが上位にきたので採用したのです。
――そんな経緯が(笑)! きらら作品では、レスポールを愛機にする女の子キャラが多いですよね。例えば、『けいおん!』の唯は、レスポールスタンダードのチェリーサンバーストを愛用しています。
はまじ:ぼっちちゃんは、バンドやギタリストにかっこよさを感じているキャラです。そういう意味で、黒くてかっこいいレスポールカスタムは彼女の憧れを投影する存在、といったところでしょうか。検索で上位についたので選んだギターでしたが、今になって思えば、キャラのイメージに相応しい選択だったと思います。数ある黒いギターの中でも配色のバランスやデザインも唯一無二で異彩を放っていますし、あの形は絵描き心をくすぐるものがありますから。