『HUNTER×HUNTER』の“週刊連載終了”は前向きなもの? 読者が「安心して待てる」状況は生まれるのか

 人気漫画『HUNTER×HUNTER』の掲載方針の変更が12月26日、「週刊少年ジャンプ」新年4・5合併号と公式Twitterにて発表された。編集部と作者・冨樫義博氏の決断をポジティブに捉えたい。

 冨樫氏の体調不良により、休載と短期的な連載を繰り返す不安定な状況になっていた『HUNTER×HUNTER』。「10話掲載→長期休載→連載再開&単行本発売」というサイクルが定番化しつつあり、今週掲載された400話が連載再開後10話目にあたり、冨樫氏の公式Twitterでもそれ以降の制作報告がなかったことから、熱心なファンは、また休載に入ることを覚悟していた。

 予想外だったのは、今回の発表が「休載」を伝えるものでなく、「No401以降の掲載につきまして、冨樫先生の体調などを鑑み、先生と編集部とで相談をした結果、今後は週刊連載ではない掲載形態で皆様にお届けすることになりました」と、掲載ペースの変更を伝えるものだったことだ。またしばらく続きが読めないのはファンにとって悲しみ以外の何ものでもないが、これまで、先の見えないまま年単位で連載再開を待っていたことを考えれば、明らかに前向きな方向転換だ。週刊連載にこだわらず無理のないペースを見出し、物語の完結まで『HUNTER×HUNTER』が安定的に続いていく……というのは、少なくないファンが期待していたことでもあった。

 当サイト記事「漫画の休載はカジュアル化しているのか 漫画編集者と考える“時代の変化”と“変わらない激務”」において、週刊漫画誌の編集経験もある漫画編集者で評論家の島田一志氏は、「休載」自体は必要だとした上で、次のように語っている。

「問題は、載ったり載らなかったり、という不安定な状態が続くことで、これは読者に対して誠実だとは言えません。例えば『モーニング』は週刊誌でありながら、以前から隔週連載、月一連載などをうまく取り入れており、作品に応じて、安定的に連載を続けられる仕組みを作っています。雑誌のカラーには合っていても、取材に時間がかかるなど、掲載ペースを合わせるのが難しい作品もありますから、その点は各誌、工夫をすべきかもしれません」

 そうした“工夫”の結果、『HUNTER×HUNTER』がどんなペースで掲載されていくのかはまだわからないが、「月一回掲載&年一冊の単行本」くらいに落ち着くことを期待してしまう。また、制作状況を知らせる冨樫氏のツイッターも、負担にならない範囲で運用を続けてもらいたい。かつては「冨樫仕事しろ」のような言葉もネットミーム化していたが、いまは「仕事をしている」ことが明確にわかり、心ない憶測が広がることも少なくなったように見える。

 繰り返しになるが、今回の発表に際しては休載を悲しむのではなく、冨樫氏の体調を最優先した上で「安心して待てる」環境を、という読者の願いが届きつつある状況を前向きに捉えたい。まずは「週刊少年ジャンプ」本誌で発表されるという、具体的な掲載時期・掲載方法の発表を待とう。

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