映画『SLAM DUNK』宮城リョータの新セリフで考える“原作の更新” 「負けたら坊主な」は花道に向けられたものなのか

 映画『THE FIRST SLAM DUNK』公開まで、1週間を切った。東映アニメーション公式YouTubeチャンネルでは、「残り○日」と、湘北高校メンバーの背番号に合わせて予告映像が公開されてきたが、11月26日、残り7日というところで、やはり背番号7番、宮城リョータにフォーカスした映像が届けられた。

映画『THE FIRST SLAM DUNK』CM15秒 試合開始まであと7日【2022.12.3 公開】

 これまでのところ、本編の内容に関する情報が限定的で、映画公開に向けて期待感を高めるファンもいれば、不満をこぼすファンも少なくない。そんななか、今回の映像で印象的だったのは、原作にないリョータのセリフ、「負けたら坊主な」だ。

 そのセリフの向かう先が誰かは明らかではないが、「坊主頭」で真っ先に想像されるのは、やはり桜木花道だろう。桜木が坊主にしたのは、インターハイ神奈川県予選の決勝リーグの初戦となる王者・海南大付属高校との試合で、敗戦に直結する、本人にとって重大なミスをおかしてしまったためだ。主人公の髪型が大きく変わる、というインパクトとともに、晴子目当てで始めたバスケットボールに心から打ち込み、チームに対する責任感を強く抱くようになった姿に感動するエピソードだった。その前夜、お互いが「負けたのは自分のせいだ」と考え、桜木と流川がぶつかりあったシーンも印象的だ。

 繰り返すように、リョータの「負けたら坊主な」という台詞が花道に向けられたものかはわからないし、「ケンカを仲裁されながら、挑発的に言っている」ようにも見えるため、まったく関係のないシーンかもしれない。ただ、もしこれが桜木に向けられたものだとしたら、“桜木の坊主”というエピソードのニュアンスが少し変わってくる。桜木が自発的に考えて坊主になったのか、リョータとの約束もあって、それを守るかたちで坊主になったのか。リョータと桜木の新エピソードが描かれる嬉しさもありつつ、個人的には前者の方が素敵だな、と思う。

 『SLAM DUNK』作者で今回の映画の監督も務める井上雄彦氏は、自身の公式サイトで「自分が歳を重ねるにつれてキャラクターたちをとらえる視点の数も少しずつ増えていく。こいつはこんなヤツだったのか、こんなことがあったのかと、いろいろな視点が浮かんで、その度にメモが少しずつ増えていきました。更新されてきました。昔、30年前には見えなかった視点もあれば、連載中からあったけどその時には描けなかった視点もあります」と語っている。最初の特報映像で見られた「オレたちならできる!」というリョータのセリフも、原作にはないもので、待望されてきた山王工業戦も含む既存のエピソードが描かれるとしたら、まさに原作では「描けなかった」視点を含むものになるということだろう。

 映画が完全な新作エピソードにならないとすれば、公開後、ファンの間では「原作になかったシーン」が大きな話題になるはずだ。それが『SLAM DUNK』という作品をより豊かなものに更新してくれることに期待したい。

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