映画『SLAM DUNK』は宮城リョータが主人公なのか 幻の読切『ピアス』で描かれた“岩場の秘密基地”

 12月3日、満を持して公開されるアニメーション映画『THE FIRST SLAM DUNK』。11月4日には東映アニメーション公式YouTubeチャンネルにて、テレビアニメ版から一新したボイスキャスト、主題歌アーティストが発表され、ファンの間で大きな盛り上がりを見せている。

 そして、ファンの考察を呼んでいるのが、湘北高校不動のPG・宮城リョータにフォーカスが当たった予告映像だ。

映画『THE FIRST SLAM DUNK』予告【2022.12.3 公開】

 映像の中で、砂浜を走る個別カットがあり、「オレたちならできる!」と唯一セリフを発するキャラクターが宮城だ。そして、『スラムダンク』という作品をよく知るファンが着目せざるを得ないのが、不意に映された「岩場」の描写である。これが、井上雄彦が『SLAM DUNK』の連載終了後、「週刊少年ジャンプ」1998年9号で発表(のちに「週刊ヤングジャンプ」(2001年49号)で再掲載)した読切作品『ピアス』を想起させるポイントになっている。

※以下、『ピアス』のネタバレを含みます。

 『ピアス』はタイトルの通り、“ある少年”がピアスを開けるまでのエピソードを描いた作品だ。『SLAM DUNK』との関係は明言されていないが、小学校6年生の「りょうた」と「あやこ」の物語であり、りょうたがピアスを開ける理由として、「マイケル・ジョーダンがしてるから オレもする」というセリフがあることからも、宮城リョータの前日譚と見られている。

 そのなかで登場するのが、岩場の洞穴にある、りょうたの「秘密基地」だ。バスケットボールが転がるその場所で、彼はあやこが海に投げ捨てて“いわくつき”のピアスをつけるため、安全ピンで耳に穴を開ける。そのボーイ・ミーツ・ガール的青春を感じさせるエピソードとともに、3年前の悲しい出来事が明かされるのが印象的だ。りょうたには兄がいた。しかし3年前、一緒に釣りに連れていってほしいとせがむりょうたに、まだ船に乗るのは危険だから「6年生になったら」と言い残し、そのまま帰ってきていない。当時、思わず「もう帰ってくるな‼︎」と叫んでしまった後悔を抱え、りょうたは岩場の秘密基地で、兄の帰りを待ち続けている。

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