【漫画】なぜ少年は不登校になったのか? 高校生の繊細な感情を描く『心の所在』に共感

ーーふたりしか知らない一晩の出来事や、変化するふたりの姿に愛おしさを覚えた作品でした。創作のきっかけを教えてください。

あやき:作中に登場する月下美人を自宅で育てていたことがあり、はじめて開花を目にした際にはその姿にとても驚きました。夏の一晩しか咲かないことから個性的なお花だと思い、月下美人が漫画の題材として使えそうだと思ったのです。

 月下美人は夏にしか咲かない花であり、また少年たちが出会い何かが変わるストーリーが好きなので、高校生の夏休みのお話を描こうと思い本作を創作しました。

ーー月下美人は一晩だけ髪色を変えたまひろくんの姿と重なります。

あやき:学生時代の私もクラスの中で目立たないタイプであり、柴崎くんのように髪を染めている子や学校をサボっている子に憧れを抱いていました。まひろには髪色を変えたまま学校に登校する勇気はないけれど、一晩だけでもちょっと悪いことをしてみたら彼の思い出になるかなと思いブリーチのシーンを描きました。

ーー本作を描くなかで印象に残っているシーンは?

あやき:最後のシーンですね。構想段階のラストシーンはまひろが1人で登校する姿だけを描いたシーンでした。一晩を経てまひろと柴崎くんが友達になったとは言い難いですが、柴崎くんがまひろと話したことで「たまには学校に行こうかな」と思ったことを描こうと思いラストシーンを変更しました。

ーー柴崎くんにとってまひろくんと過ごした一晩はどんな時間だったのでしょうか。

あやき:美容師を目指していると話したことをまひろが覚えていたこと、まひろに「せっかくだからブリーチしてよ」とお願いされたことのうれしさは、柴崎くんが登校するようになったことにつながっていると思います。はじめての経験をだれかと共有する体験はまひろにとっても、柴崎くんにとっても今後ふと思い出せる出来事になっているんじゃないかなと思いますね。

ーー本作に込めた思いを教えてください。

あやき:生きているなかで事件やインパクトのある出来事はあまりないと思っています。ただ、そんな人生のなかでも学生時代に経験したちょっとだけいいことって、学校を卒業したあとも思い出すことがあると思います。あの頃ちょっといいことあったよな~という気持ちを読者の皆さんにも共有できたらラッキーだと思いながら作品を描きました。

ーー漫画を描きはじめたきっかけを教えてください。

あやき:小さい頃から漫画やアニメが好きで、漫画雑誌などをマネしながら絵を描いていました。小学生の頃に友達のことや身の回りで起きたことを題材にエッセイのような漫画を描いて、読んでくれた人から「上手だね」と言われて、調子にのって……。そんなことを繰り返しながら漫画を描くようになったのだと思います。

 それから自分のホームページをつくり自身のイラストを掲載していましたが、もっと多くの人に見てもらえるようになりたいと思いイラスト投稿サイト「Pixiv」にも投稿するようになりました。Pixivでの投稿をきっかけに知ってもらえる機会が増え、現在はTwitterなどのSNSにも投稿するようになりました。

ーーあやきさんは長きにわたり創作や投稿を続けているかと思います。創作活動のモチベーションになっているものは?

あやき:漫画を描いている最中に「なんでこんなことしているんだろう」と思うことはよくあります。漫画は1ページを完成させるための工程が多く、途中でやめたいと思うことも多いです。

 ただ「作品が面白かった」と言ってもらったり、作品を読んでもらい色んなことを考えてもらう経験って、漫画を描いているからこそ得られる特別なものだと思います。そう思うと漫画を描こうかなという気持ちになりますね。

ーー今後の活動について教えてください。

あやき:私の作品は派手なシーンや大きな事件が起きることはなく、淡々としたお話を描いたものがほとんどです。出会った人とか、私が面白いと思ったこととか、生きているなかでじんわりと疑問に思ったことを漫画で描いていけたらいいかなと思います。

■あやきさんの作品『べんりなふたり(仮)』がWEBコミックメディア「路草」にて11月より連載開始予定です!
https://michikusacomics.jp/

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