アニメ『不滅のあなたへ』第2期スタート マクロ&ミクロな視点から人間の本質を探る大河ファンタジーに注目

 10月23日19時より、テレビアニメ『不滅のあなたへ』(NHK Eテレ)のシーズン2が放送を開始する。

 漫画・アニメファン以外の注目度は抜群とはいかないかもしれないが、原作は、道徳教材化もされた大ヒット作『聲の形』の作者・大今良時の2作目となる連載漫画であり、壮大な世界観を持つ大河ファンタジーとして、多くの読者の心を掴んできた。

 物語の冒頭から印象的だ。“観察者”により、地上に不可思議な“球”が投げ入れられる。その球は接触したありとあらゆるものの情報を収集し、その姿に変化することができる。やがてオオカミの姿になった球は、雪に包まれた大地でひとり暮らす少年と出会い、ともに豊かな土地を求めて旅に出ることに。しかし、何度死んでも再生する“球”と違い、有限の命を生きる少年は力尽きてしまうのだった。少年の姿を獲得したその球は、刺激に溢れた世界を彷徨う永遠の旅を始めるーー。

 “球”が人間の姿を獲得したのは、少年から受けた「刺激」によるためだと、作中で説明されている。オオカミの姿になって初めて「意識」を手に入れた“球”は、少年が夢見た未知の世界へ、旅を始めるが、それは「不滅」であるがゆえに、出会いと別れを永遠に繰り返すものになる。次に出会った村落の少女に、「不死=フシ」と名付けられたその“球”は、多くの出会いと別れを経て、徐々に自我を獲得し、人間に近しい存在へと成長していく。

 そんなフシが何者かになれるのか、という大きな物語を見守りながら、人間の本質を探る楽しみがあるのが、本作の魅力だ。超越的な“観察者”の視点、もともと完全に無垢な存在であるフシの視点から、さまざまな時代、文化、社会が俯瞰的に描かれ、そこに生きる人々の愛おしさや愚かしさがフラットに伝わってくる。

 そして、もう一方の主役はフシが出会う人々だ。俯瞰的な視点からは見落とされがちな、しかしミクロな視点では限りなく切実な何かをフシが発見し、読者/視聴者に投げかけていく。フシが観察者から与えられたミッション、記憶を奪う謎の生命体・ノッカーとの戦いなど、ファンタジーとしても見所の多い本作だが、「人」を描く作品としての強度が、その魅力を支えているように思える。アニメで興味を持った人は、前世編から現世編、来世編へと進行している連載&コミックスも、ぜひチェックしてもらいたい。

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