『おひとり様物語』は人生の伴走者だったーー連載17年、見事なフィナーレを見届けて

 たしかに恋愛を題材にした話は多い。しかしそれだけではなく、母親と娘の関係の話や、自意識過剰なOLがマイペースな会社の先輩に振り回される話、どこかに鍵を落とした主人公が人々の善意に救われる話など、実にバラエティに富んでいるのだ。ハッピーエンドもあれば、ビターエンドもある。だけど誰もがラストには前向きに、おひとり様の自分を受け入れる。本作の読み味のよさの理由は、ここにある。

 さらに主人公は社会人の女性が中心だが、女子大生や女子高生の場合もある。男性主人公の話まであったりするのだ。この幅広さも本作の魅力だろう。

 しかも巻を重ねるうちに、再登場する主人公が増えていく。最多は、五度登場した文筆業の佐藤多江だろうが、二度三度登場する人も少なくない。また、ある話で脇役だった人物が、別の話で主人公を務めることもある。読み進めると、どんどん物語の世界が膨らんでいき、何人かの登場人物の人生と、ほんのわずかの間とはいえ、伴走しているような気分になってしまうのである。

 そして改めて思うのだ。私は『おひとり様物語』と、長年にわたり伴走していたのだと。尾田栄一郎の『ワンピース』を始め、長期連載の漫画は少なからずある。自分の人生の傍らに、常に特定の漫画があるという人もいることだろう。このような漫画は、まさに人生の伴走者といっていい。それが完結によって途絶える。もちろん他にも伴走している小説や漫画はたくさんあるが、淋しいものは淋しいのだ。最終話となった第七十五話で、第一話の山波久里子が38歳になって登場し、『おひとり様物語』が見事なフィナーレを迎えたことを喜びながら、もっと伴走していたかったという想いを抱いてしまうのである。

 だが、嘆くことはないだろう。作者は現在、さまざまな〝はじめて〟をテーマにした『はじめてのひと』を連載中であり、単行本も第六巻まで刊行している。一つの作品の伴走が終わっても、谷川作品との伴走は終わらない。それはとても幸せなことなのだ。

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