【漫画】高校を中退、深夜の散歩をしていたら……「周りになじめない」ダメ人間の言葉に共感

ーー静かな街並みや特徴的な画風から深夜特有の雰囲気を感じた作品でした。創作のきっかけを教えてください。

夜野ムクロジ(以下、夜野):私が精神病を患っていた20代の頃、深夜によく散歩をしていました。その時に見た深夜の風景の静かな美しさを漫画にしたいと思って描いた作品が本作です。

ーー印象に残っているシーンを教えてください。

夜野:物語の終盤にて転校生の女の子が「自分はアホな病気で死んでもアホなやつに殺されてもかまわない」と話すシーンが気に入っています。本作を描いた当時の心情をそのまま漫画として描いたシーンであるため印象に残っています。

ーーこの転校さんの台詞は中退さんへの気遣いを感じつつも、独り言のように発せられた台詞であったと感じています。

夜野:私は人と話すことの少ないタイプで、独り言といいますか、自分と頭の中で対話することが多くあります。私自身、まるで独り言で生きているような人間なのかもしれません。

 独り言には寂しさを軽減させるような効果があると感じており、自分と対話することで寂しさを忘れる感覚を覚えます。それこそが独り言の魅力だと思いますね。

ーー他人の独り言だからこそ、中退さんの寂しさを紛らわせたのかもしれません。

夜野:独り言って1人で本を読むことに近いかもしれません。読書は作者と対話するという捉え方もあるかと思いますが、自分と対話することもできると思うのです。だからこそ他者の独り言は読書と同様に、寂しさを軽減させてくれたり、自分を見つめなおす機会になるのだと感じています。

ーー物語の舞台として線路の上を選んだ理由は?

夜野:1人で外出したときに線路を見ると「線路を歩いてみたいな」と思うことがあります。線路を見る度にそんな心情を抱いていたからこそ、この漫画では線路を歩くシーンを描こうと思ったんです。実際に線路を歩くことは犯罪なので、現実ではできないことを漫画でやってみた感じですね。

ーー物語の終盤で骨を食べる博打を描いた背景を教えてください。

夜野:おじいちゃんのお葬式に参列したとき、おじいちゃんの骨がまるでポップコーンみたいに見えたのです。その光景を目にしたことをきっかけに、作品のなかで骨を食べるシーンを描きたいと思いました。

ーーまるで版画のような画風だと感じました。本作の制作方法は?

夜野:本作はデジタルツールを用いて描いており、ページ全体を真っ黒に塗ったあと白い線で少しずつ描いています。こうすると版画風のような雰囲気を生み出せることと共に背景が真っ黒となるため、ある程度背景の描写を省略できることがメリットとして感じています。

ーー漫画を描きはじめた経緯を教えてください。

夜野:小学校1年生くらいの頃に漫画雑誌『ちゃお』(小学館)の表紙や背表紙がすごく可愛いと思いました。自分もこういうかわいい背表紙を描いてみたいと思ったことが漫画を描こうと思ったきっかけですね。

 表紙や背表紙を描くためには中身の漫画を描かないといけないと思い、表紙や背表紙を作りたいがために中身の漫画を描くようになりました。ただ漫画を描くなかで漫画そのものを描くのも楽しくなりましたね。

ーー夜野さんは漫画のほかにゲームや音楽といったさまざまな作品を発表しています。表現媒体としての漫画の魅力は?

夜野:漫画は自分の考えた妄想をダイレクトに表現できる媒体だと思っています。小説やアニメなどさまざまな媒体がありますが、漫画における絵と文字の割合が自分にとってちょうどいいと感じます。小説やアニメ、漫画のなかで、私にとっては漫画が自分の考えた妄想を最も形にしやすかった、そんな感じです。

ーー今後の目標を教えてください。

夜野:私には漫画の師匠がいるのですが、まずは師匠を超えることが目標です。具体的には師匠の作品よりも自分の作品が後世に長く残るものになることを目指しています。

 また私は自分自身をダメな人間だと思っていて……。そんな自分だからこそダメ人間の面白さや可愛さ、切なさみたいなのを漫画で表現していきたいです。

 

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